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米連邦通信委員会(FCC)戦略計画局のケネス・カーター氏が,IEEE(米国電気電子技術者協会)で策定中の次世代無線ブロードバンド技術「WiMAX」について講演した(写真)。FCCの政策とは独立した立場で,WiMAXに対する独自の調査研究についてトピックや考え方を披露した。講演のタイトルは「ブロードバンド・ワイヤレスWiMAX ライセンス制度化とアメリカにおける地方自治体のワイヤレスネットワークについて」。講演は6月6日に東京都内で実施された。
カーター氏はまず「無線の分野はルールが複雑になりすぎている。厳しいものから無免許までライセンスのオプションがいくつもある」とした上で「WiMAXは柔軟性のあるライセンスが望ましい」との見解を示した。「ライセンスを不要にしても,機器メーカーは電波強度などを満たす必要があるため,無秩序になるわけではない」(カーター氏)との考えだ。
興味深いのが「米国ではこの1年,無線帯域に関する政策が見直されている。FCCは指示や命令一辺倒というよりも,市場の力を導入する方向に向かっている。政府は無線を実際に使う人ほど分かっていない」(カーター氏)という発言。指示や命令を減らすことで「ライセンスが不要な無線帯域も増える。技術がすべてを変え,第3の新しい機器がどんどん生まれてくるだろう」と言う。もっとも「WiMAXがすべてライセンスが不要というわけでなく,市場への参加者がラインセンスが要る帯域を選べる選択肢を用意しておく必要がある」との考えも示した。
無線LAN(Wi-Fi)との違いについてカーター氏は「WiMAXはセンター側で,送信タイミングなどを一括に管理するモデル。基地局と端末が明確に分けられている。WiMAXの電波出力はWi-Fiに比べてかなり大きい。そのため,他のユーザーと干渉する可能性が高い」。
もう一つの大きなトピックとして取り上げたのが,自治体による無線アクセス・サービスへの取り組みだ。米フィラデルフィアで市長が音頭をとって始めた「ワイヤレス・フィラデルフィア」やフロリダのセントクラウダの例を挙げた。
カーター氏は「無線サービスを自治体が提供すれば,住民にとっては年間500ドル近い節約となる。それだけで隣町から引っ越して来る価値がある。無線を自治体のサービスに活用することも可能になる」とのメリットを指摘。その一方で「民間の通信事業者との競合の是非という側面もある。自治体は税金を収集する強大な権限を持っている」との問題点を指摘した。そのため,実際に自治体がサービスを提供することを制限する法律の策定も進んでいるという。
なお,講演は甲南大学通信情報研究所(KITI)が開催したもの。KITI所長で甲南大学経済学部の佐藤治正教授が司会を務めた。