韓国の通信機器ベンチャーのタサン(茶山)ネットワークスは,韓国を中心に日本へもVDSL(very high bit rate DSL)モデムやレイヤー2スイッチを販売している。ミンウー・ナム社長兼CEO(最高経営責任者,写真上)に,韓国と日本のブロードバンド市場への戦略を聞いた。

--主力製品は何か。

 レイヤー2スイッチやVDSL,GE-PON(gigabit ethernet-passive optical network)などアクセス系の装置を作っている。韓国ではKTやハナロ・テレコム(HTI)などに納品しており,通信事業者向けアクセス装置では約80%のシェアを押さえている。

--日本市場をどう見ているのか。

 日本市場は韓国市場以上に注目している。韓国のブロードバンド加入者数は頭打ちの状況だが,日本は伸び続けているからだ。

 韓国ではADSL(asymmetric digital subscriber line)からFTTH(fiber to the home)やVDSL(集合住宅まで光ファイバで建物内をVDSLで分岐するサービス。日本でいうマンション向けFTTHと同様のサービス)への乗り換えが顕著になってきた。だが,あくまでサービスの乗り換えで,ブロードバンド加入者の総数で見ればもう頭打ちだ。一方,日本はADSLの加入者数の増加率こそ伸び悩んできたものの,総数としては伸び続けている。ADSL以外にもマンション向けのFTTHや戸建て向けのFTTHなども伸びている。この点で韓国とは異なる。

--日本市場への戦略は。
 
 日本は難しいマーケットだ。韓国よりも価格競争が厳しい。韓国は通信サービスの料金がアクセス速度によって異なる。だが日本は速度が速くなっても料金はあまり変わらない。

 日本国内の通信事業者に製品を納めた実績が既にある。だが,NTTグループに製品を供給するためのハードルは相当高いと予測している。当社はNTTグループに製品を供給するには,企業規模が小さすぎる。他社とのパートナーシップをうまく生かして,NTTグループのFTTHを狙いたいという野望を持っている。

--韓国というとサムスン電子やLG電子の存在感が大きい。ベンチャー企業は多いのか。

 韓国には多くのベンチャー企業が存在したが,2000年ごろのテレコムバブルの影響で多くの会社が立ちゆかなくなった経緯がある。当社も厳しい時期があった。だが当社は,他社が研究開発費を投じなくなった時期でも研究開発を続けた。ここで培った技術力が現在の競争力の源になっている。また,2004年5月に独シーメンスの出資を受け完全に復活した。今後,日本と韓国はタサン・ブランドで,そのほかはシーメンス・ブランドで製品を供給していくことになる(写真下)。

--新製品の予定はあるのか。

 インターネット接続,IP電話,映像サービスを合わせて提供するトリプルプレイ用のソリューションを今準備している。ユーザー宅内に設置する通信機器(CPE:customer premises equipment)は今後ますます進化するはず。今年の9月~12月には,トリプルプレイ用のCPE製品を提供できそうだ。

(山根 小雪=日経コミュニケーション