「今後の重要な“コンバージェンス(融合)”は三つ。(1)ネットワークの融合,(2)サービス管理の融合,(3)アプリケーションの融合だ。これらを通信事業者の収益につなげるのがシスコの“IP NGN(next generation network)”」――。米シスコシステムズのマイク・ボルピ上級副社長は5月31日,横浜みなとみらいで開催中の国際イベント「BROADBAND WORLD FORUM(BWF)ASIA」の基調講演に登壇(写真)。同社が打ち出したコンセプト「IP NGN」を紹介した。

 ボルピ上級副社長は,「現在の通信市場は,トラフィックの伸びに事業者の収益の成長率が追いついていない状況。IPパケットを転送するだけではなく,もっと能力の高いインフラを作らないと将来の収益確保が難しい」と主張。これを打破するキーワードとして,冒頭の三つの融合を紹介した。

 (1)のネットワークの統合は,サービスごとに分かれている複数ネットワークの統合を意味する。投資コストや運用コストが削減できる。(2)のサービス管理の融合は,ネットワークやサービスごとにあった管理システムの一元化を指す。最後の(3)アプリケーションの融合は,映像とIP電話が合体したテレビ電話などの新サービスを指す。

 こうした三つの融合を通信事業者のビジネスにつなげようというコンセプトがシスコの「IP NGN」。「これまでのIPのように,『高速だがベストエフォート』ではなく,管理のプロセスも盛り込み,通信事業者のコア・ネットワークでも使えるIPネットワーク構築を実現する」(ボルピ上級副社長)。そのコンセプトに準じているのが,大型ルーターの「CRS-1」である。ただ,IP NGNは単なる製品群にとどまらず,製品導入やサービス提供に付随するソリューションも含む。

 「よい製品をこれからも出すが,それだけではダメ。IP NGNのコンセプトにより,通信事業者が一元化したネットワークでコストを下げるだけでなく,新しいビジネス・モデルを作って収益をあげることができるかが,今後のシスコとしても重要だ」と,講演を締めくくった。

(宗像 誠之=日経コミュニケーション