「まさに今,ブロードバンド市場では二つの転換が起こっている」――。世界各国の通信事業者やベンダーが一堂に会する国際イベント「Broadband World Forum(BWF)Asia」(横浜みなとみらいのパシフィコ横浜で開催中)。通信機器メーカーの仏アルカテルのクリスチャン・レイノード執行副社長兼アジア・パシフィック担当社長がオープニングの基調講演を務め,現在のブロードバンド業界に巻き起こっている転換点についての見解を披露した。

 レイノード執行副社長が指摘したのは,サービスを使う側の顧客と,提供する側の通信事業者側の両方向からの転換。まずは「顧客によるサービスへの期待が変わってきた」と説明。「もっとシンプルなサービスを求めるようになる一方で,使いたいサービスなら今までより高い料金を支払ってもいいという意識まで生まれている」(レイナード執行副社長)という。一例としてあげたのはFMC(fixed mobile convergence)サービスへの流れ。ブロードバンド回線,無線LAN,携帯電話のように,端末などがサービスごとに明確に限定されている現状から,FMCにより端末や請求が一つになるシンプルさを求める“大きな波”が来ていると説明する。

 通信事業者側の変化とは,「競争環境が大きく変わってきていること。既存の通信事業者同士ではなく,CATV事業者や衛星テレビといった通信事業者以外との競争の図式が出てきている」。

 そして,こうした顧客側と事業者側の二つの変化が行き着く先は,「ユーザー・セントリック(中心)のブロードバンド」への移行であるという。レイノード執行副社長は,「ユーザー側で変わりつつあるサービスへの期待を取り込むことで,ブロードバンド回線を提供する通信事業者がフルサービスを提供するチャンスが生まれる。これは,通信事業者にとって,まだまだ顧客開拓の余地があることだ」と力強く断言した。

 後半では,「そういったユーザー・セントリック・ブロードバンドを通信事業者が提供するには,ネットワークの統合などでアルカテルはパートナーとして手伝える」とアピール。実例として,テレコム・ニュージーランドと米SBCコミュニケーションズを紹介した。前者は2002年から,レガシーのネットワークを収れんさせながら単一のIPベースのネットワークへ移行。キャッシュフローが大幅に増大したという。

 SBCの事例は「Project Lightspeed」と呼ばれる,トリプルプレイ・サービス。「かなり大規模なネットワークの転換で,コストを下げつつ売り上げも上げられるはずだ」(レイノード執行副社長)とパートナーとして自信を見せた。

(宗像 誠之=日経コミュニケーション