総務省は5月18日,FTTH(fiber to the home)回線を敷設するために必要となる電柱の利用手続きを簡素化する措置についての検討会を開催した(写真)。NTT東西地域会社以外の通信事業者が,FTTH回線を自前で敷設しやすくするのが目的である。

 検討会に参加したのは,東西NTT,KDDI,ソフトバンク・グループの通信事業者各社と,電柱を管理する東京電力,関西電力など。1回目の今回は,東西NTTが3月に総務省に提出した簡素化案を説明し,同案に基づいてKDDIやソフトバンクが意見・要望を述べた。

 現在,東西NTTはFTTH回線を電柱に敷設する際に,電話ケーブルの敷設に利用している専用スペースを流用できる。これに対し,KDDIやソフトバンクは共用スペースを使うため,東西NTTよりも複雑な手続きが必要になっている。この状況を改善し,東西NTTと他事業者で敷設する際の条件をそろえるにはどうすれば良いかが主な論点になった。

 まず,東西NTTが共用スペースを利用する際の手続きを個別対応だけでなく一括対応にも応じる案と,共用スペースに空きがない場合に一部の専用スペースを開放する案を示した。

 これに対しKDDIやソフトバンクは,「まず優先的に東西NTTの専用スペースの一部を開放し,我々も余計な手続きを経ずに使えるようにしてほしい」(KDDI)と要望。一方の東西NTTは,「共用スペースに空きがある時は,まず共用スペースを使ってほしい」との立場を繰り返した。

 議論の応酬はあったが,FTTH事業者の間では東西NTTの専用スペースの一部をどのような形態で開放するかを軸に議論が進む雰囲気がうかがえた。ただし,電柱を管理する立場の東京電力が「スペースの一部を開放する場合は,電柱の公平利用の観点からFTTH事業者以外にも平等に開放すべきではないか」との意見を表明。東西NTTも同意するなど,実際に各社が合意できるルールが整うまでには課題が山積みであることも浮き彫りになった。

 次回の検討会は,5月末から6月初旬ごろに開かれる予定。総務省は6月中に議論をまとめ,諮問機関である情報通信審議会に報告したい考えである。

(島津 忠承=日経コミュニケーション