ソフトバンクは5月10日,2004年度(2005年3月期)の連結決算を発表し,これまで大幅赤字の原因となっていたADSL(asymmetric digital subscriber line)事業が2004年度の第4四半期の営業損益で19億円の黒字を達成したことを明らかにした。ADSL事業が四半期ベースで黒字化するのは,これが初めて。

 ソフトバンク・グループはここ数年,ADSL事業に対し先行投資を続けおり,2002年第4四半期には最大339億円の赤字を出したこともあった。

 ADSL事業の黒字化の理由は,1ユーザー当たりの平均通信料の上昇や,顧客獲得費の減少など。また1%台で安定している解約率の低さも影響した。「黒字化達成により投資回収期を迎えた。これから数年で累損を解消していく」(孫正義社長,写真)。

 2004年度通期では,売上高が8370億1800万円,営業損益が253億5900万円の赤字,経常損益は452億4800万円の赤字だった。当期損益も598億7100万円の赤字。いずれの数字も前年度から大幅に改善しており,孫社長は「2005年度は連結ベースで黒字化する」と強調した。

 また,2004年度は実質的な営業キャッシュフローを220億円の赤字から440億円の黒字に転換。2005年度は最低でも1500億円以上の営業キャッシュフローを見込む。「安定した財政基盤を作ることによって,今後参入を目指す携帯電話事業への投資などに備えることができる」(後藤芳光財務部長)と,携帯電話事業に参入しても赤字化は避けられるとしている。

 

(中村 良輝=日経コミュニケーション