京都で開催中のアジア太平洋地域のインターネット基盤技術の国際会議「APRICOT 2005 KYOTO」で,韓国KTが無線LANによる高速インターネット・アクセス・サービスのWiBro(Wireless Broadband)の取り組みについて明らかにした。WiBroは,韓国政府がIT政策の最重点項目として力を入れている無線仕様。2.3GHz帯の周波数をモバイルによるワイヤレス・アクセス用に新規に割り当て,2006年のサービス開始を目指している。

 KTのワイヤレス・ネットワーク計画部ディレクタであるハンサップ・リー博士は,「既存の無線LANに比べて動きながら使えることと,第3世代携帯電話に比べて伝送速度が高いことがWiBroのメリット。高速のインターネットを動きながら使うことができる」と説明した。速度については,ユーザー当たり最大3Mビット/秒,おおよそ1Mビット/秒で利用できるという。WiBroの技術仕様はIEEE 802.16をベースにした韓国独自となっているが,「今年の6月にはIEEE 802.16eとハーモナイズしていきたい」(リー・ディレクタ)と,IEEE 802.16eの一部として提案していく意向を示した。

 リー・ディレクタはサービス像についても語った 。「一つの端末にWiFiとWiBroの両機能を搭載する。KTは2万のホット・スポットを持っており,これを使っているユーザーにWiBroをアピールしたい」という。料金については,「ユーザーが月額30ドルか40ドル程度の定額で利用できる」(リー・ディレクタ)との見通しを示した。IEEEの標準仕様とすることで端末や基地局の調達価格を下げ,バックボーンのネットワークを他のサービスと共用することでコストを引き下げる。

 最初にWiBroのサービスがお目見えするのは,今年の11月となりそうだ。「11月に韓国・釜山で開催されるアジア太平洋首脳会議でデモを実施したい」(リー・ディレクタ)。その後,2006年4月にソウルなど大都市でサービスを開始し,2007年に中規模都市,2008年には地方都市のすべてまでカバーするという。

 周波数の割り当てについては,韓国政府が1月に最終判断を下したという。選考の過程では1社が断念。政府が評価・判断をしKT,SKテレコム(SKT),ハナロ・テレコム(HTI)の順番で優先度を付与した。

 APRICOT 2005の同セッションではこのほか,NTT西日本のブロードバンド推進本部 BBアクセスサービス部の清水哲司氏が,国内ブロードバンドの進展状況と3月に始める新FTTHサービスのネットワークと付加サービスについて講演。中国Tshinghua大学ネットワーク研究センターのリン・ヤン博士も,中国におけるIPv6のインフラと機器の開発状況についてプレゼンテーションした。司会は,ソフトバンクBBのネットワーク・オペレーション本部の福知道一氏が務めた。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション