アジア太平洋地区におけるENUMの普及団体APEET(Asia Pacific ENUM Engineering Team)が,国内初となる公開通話デモンストレーションを実施している。2月21日から25日にかけて京都で開催中のインターネット基盤技術のアジア太平洋国際会議「APRICOT2005」の会場内で,参加者同士が自由に体験できる。実験の責任者である日本レジストリサービス(JPRS) 技術研究部の米谷嘉朗部長代理によると,「ENUMの実験を国内で一般公開するのは初めて」だという。

 ENUMはインターネットを通じて電話番号とその関連情報を交換する技術。インターネットで接続されている世界中の端末とP2P(Peer to Peer)で接続できる。今回はAPRICOTの参加者に,デモ用のENUM番号を配布(写真上)。参加者同士で通話できるようにした。ユーザーはWebブラウザから「888-2005-xxxx」という11ケタのデモ用ENUM番号と端末のアドレス情報を登録するだけで使えるようになる。

 ユーザーは,日立電線が貸し出すIP電話端末の「WirelessIP5000」(写真下左),またはユーザー自身のノート・パソコンにセットアップしたソフトフォンを利用すれば通話が可能。無線LAN経由で,SIP(session initiation protocol)サーバーとENUMサーバーに接続する。日立電線は「ネット関連の有識者が海外も含めて一同に集まる良い機会」として100台のIP電話端末を用意。担当者を張り付けた。

 今回最大の目的といえるのは海外ユーザーとの接続。ENUMはインターネット上の端末を「国番号+ENUM番号」で呼び出し,P2Pで接続できる。デモではIP電話端末ではなく,インターネットに接続された各国の公衆網ゲートウエイとつないだ。接続先としては,スウェーデンや米国,中国などを確認(写真下右)。「アジア太平洋地域からENUM番号で海外につないだのはこれが初めて」(JPRSの米谷部長代理)。

 2月23日には日本,中国,シンガポール,台湾のENUM関連団体が進捗状況を報告。日本からはJPRSの堀田博文取締役企画本部長が登壇した。

 なお,ENUMを国際的に本格運用するには,総務省が国際電気通信連合(ITU)に国として正式な手続きを取る必要がある。現在,総務省の研究会で時期や方法について話し合っている段階。例えば,IP電話の「050」のように新たな番号体系を割り当てるのも一つの選択肢とされている。ENUMを使うことで,電話だけでなく,電子メールやファクシミリ,Webページなど複数のコンタクト手段を統合することが可能となる。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション