米イカノス・コミュニケーションズは2月9日,電話用銅線ケーブルを使って上下双方向100Mbpsの伝送速度を実現するLSI製品群を発表した。集合モデムなどへの組み込みを想定したチップセット「Fx 100100」と,ユーザー宅内に設置するモデム用チップセット「Fx 100100S-4」を用意する(写真はサンプル・ボードを使ったデモの様子)。欧米市場では,“ラスト・ワンマイル”向けも想定しているが,日本市場では主に集合住宅などの構内配線用途を狙う。

 Fx 100100は,変調方式としてDMT(discrete multitone)を採用するが,既存のxDSLよりも利用する周波数帯域が広い。例えばG.993.1準拠のVDSLが使う周波数帯域は12MHzだが,Fx 100100は30MHzだ。ただし,Fx 100100側で使用する周波数帯域などを調整できるため,同社が出荷しているVDSL製品との相互接続も可能。上下双方向とも100Mbpsを実現できる距離は「(ノイズの影響などを考慮し)現実的には150m程度」(イカノス・コミュニケーションズ・ジャパンの名田 知明・FAE Manager)だという。

 既存の同社製VDSL用LSIを組み込んだ集合モデムや宅内モデムは,NECや住友電気工業から出荷されており,「(日本国内では)マンションを中心に同分野で9割近くのシェアがある」(同社の尾山 佳助・ジャパンカントリーマネージャー)という。FTTHの伝送速度を生かせる強みを武器にして,新規需要だけではなく既存機器の置き換え用途も狙う。

(大谷 晃司=日経コミュニケーション