慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授(写真)は1月21日,ヤマハが同社製ルーターの発売10周年を記念して開催した講演会でスピーチし,光ファイバ網とVoIPの関係に触れた。VoIPが,いかに遅延なくデータを通すかが勝負だとした上で,今後は「光ファイバをどう使うか,地理的な距離がセンシティブになる」と述べた。

 VoIPの利用を世界レベルで考えると,光ファイバ網の途中経路にルーターなどが入ることで「(電話を快適に使うには)微妙な数値に近づいている」(同氏)。つまり今後,インターネットでの利用増が見込まれる音声や映像といったリアルタイム性が重要なアプリケーションは「もはや光を意識しないとだめ」(同氏)で,「地理的な距離を意識せざるを得ない」と語った。

 例として村井氏は,日本と欧州間の光ファイバ網を挙げた。現状,アジア各国を経由しているが,シベリア鉄道に光ファイバを引けば,その遅延時間は現在の半分程度に収めることができるという。

 こうした意識は,村井氏が20年間インターネットにかかわってきて初めてのことだという。

 また,これからの10年,日本の優位性が期待できる分野としてIPv6を挙げ,その中の例として,ITS(高度道路交通システム,intelligent transport systems)分野を挙げた。

 路車間,車車間通信に使う広中域高速無線通信向けのプロトコルの標準化案であるCALM(communication air interface for long and medium range)は,そのベースにIPv6を使うことがISOで規定されている(ISO 21210-1,Routing and Media Switching based on IPv6と記述)。

 その点に触れ,「IPv6をやっているのは日本企業だけだから,この標準化を進める委員会は日本の企業にしか頼めない。リーダーは日本から出すしかない」(同氏)と,IPv6分野でのこれからの日本の役割を強調した。

(大谷 晃司=日経コミュニケーション