トレンドマイクロは1月6日,スティーブ・チャン代表取締役会長(旧・代表取締役社長兼CEO,写真左)とエバ・チェン代表取締役社長兼CEO(旧・取締役グループCTO,写真右)の就任記者会見を開催した。

 最初にあいさつしたチャン会長は,「ITマネージャにとってはネットワーク・セキュリティが日々の重要事。つまり大きなネットワーク・ウイルスが来ても事業を継続できるようにすることが大切」と説明。こうした顧客企業やパートナ企業との強い関係を結ぶために「ネットワーク・セキュリティ分野で強く,真の意味で世界市場の中で競合できるよう成長しないといけない。そのために企業統治が重要と考える」と訴えた。

 そのチャン会長の前職を引き継いだチェンCEOは,トレンドマイクロの共同創業者の一人。「米国トレンドマイクロの業務部門を競争力ある部門として成功させた」(チャン会長)実績を持つ。今後チェンCEOは,企業を成長させるための諸政策を決定,実行するといった企業統治を担当。チャン会長は,対外的な交渉や顧客との関係の構築といった分野を担当していく。

 そのチェンCEOは三つの戦略を披露した。「一つは予測不可能な脅威が必ず起こることを理解し,大規模感染が発生してから終結するまでいつでも顧客を支援できる体制を整えること。二つめはタイムリーにアップデートを提供していくこと。そのためには顧客を即座に支援できる組織,製品,技術が欠かせない。そして三つめは,アップデートをどのように提供するか。我々はネットワークの情報フロー(ルーターやスイッチなど)の中にサービス・技術・製品を統合していく」。ネットワークにセキュリティを統合していく戦略の一例が,シスコシステムズのIOS(ルーターなどのOS)にトレンドマイクロのウイルス対策技術を統合していく内容での合意。チェンCEOはその交渉役も務めたという。

 チェンCEOは新しいセキュリティの脅威にも言及。「ネットワークが拡大しアプリケーションの数が増えるにつれて,悪意ある人やコンテンツも増えている。昨年の今ごろスパイウエアの名前を聞いたことがない人が大半だった。だが今年,多くの人がスパイウエアの攻撃を受けている」と説明。「携帯のアプリケーションを見ると,メッセージがトリガーになって他の電話にどんどん発信しウイルスのように広がるものが考えられる。重要なビジネスツールとして活用されているVoIPにしても,ぜい弱性が見つかれば業務が中断してしまうことになり得る。新しい脅威には新しい保護策が必要だ」(同)と訴えた。

 今後同社は「カスタマ・セグメンテーションに応じた組織作りを目指していく。顧客のニーズにマッチした形で製品を提供できるようにする」(大三川彰彦・執行役員日本代表)と言う。

(山崎 洋一=日経コミュニケーション