総務省が推進するu-Japanは,「ICT(information and communications technology)を使って実現する,いつでも,どこでも,何でも,誰でもつながるユビキタス・ネットワーク社会」。12月17日に「ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会」の最終報告書とu-Japan政策の骨子,同政策の工程表を公開した同省の和久屋聡・情報通信政策局総合政策課課長補佐にu-Japanのポイントと今後の予定を聞いた。

(山崎 洋一=日経コミュニケーション

--通信が重要なのはなぜか。
 今までは人と人との通信が中心だったが,ユビキタスネット社会ではそれだけにとどまらない。例えば端末から冷蔵庫の在庫を確認する,冷蔵庫が中にある食品に付けたタグと通信して賞味期限の情報を入手する,といったことが可能になるだろう。つまり人とモノ,モノとモノも通信する時代となる。

--政府はe-Japan戦略を進めているが,e-Japanとu-Japanはどのような関係にあるのか。
 推進中のe-Japan戦略IIは2005年までの予定。2006年以降のことは決まっていない。おそらく2005年に今後についての議論が始まるだろう。そこで総務省が,今後についての議論のたたき台にしてもらえればと考えて作成したのがu-Japan政策だ。例えば懇談会から要請を受けて総務省が作成した「工程表」で,2010年までに実行する具体的な政策のスケジュールを示している。

--u-Japanはe-Japanからどのように進化させようと考えたのか。
 例えばブロードバンド化を進めるだけではなく,それを利活用すること。環境整備も重要だが,それを生活や産業に役立つ道具として定着させていきたい。有線と無線をシームレスに使える環境にすることも必要だ。ICTを社会課題の解決に使うことも盛り込んでいる。

--例えばどのような取り組みを打ち出しているのか。
 高速ネットワーク3000万世帯,超高速ネットワーク(光ファイバのこと)1000万世帯を目指してきたが,地方にはまだxDSL(digital subscriber line)を使えないような場所がある。全体の底上げが必要だ。有線で全部やる必要はなく,無線も含めバランスよくやれればよい。2010年には,国民の100%が高速または超高速のネットワークを利用できる状況にする。
 またユビキタスネットになると,ネットワークにつながる端末の数が増えてネットワークにつなげる場所も拡大していく。それに伴って無線の役割が大きくなり,周波数が足りなくなる。そこで抜本的・効率的に電波開放戦略を進める。

--今後の予定を教えて欲しい。
 2005年の年明けに,最終報告書に掲載している「ユビキタスネット社会憲章(案)」に対する意見募集をする予定だ。これは議論のたたき台として国際会議に提出したいと考えている。