ブロードバンド推進協議会は11月30日,東京都内で米通信業界の政府による規制と事業経営について議論するカンファレンスを開催した。「米国における通信事業分野の競争政策」と題して,米国から専門家を招いた。

 メンバーは,米司法庁の副長官を務めた米コーネル大学ロースクール教授のドナルド・ベーカー氏,通信政策と独占禁止法に詳しいエコノミストのジョン・ヘイズ氏,独占禁止法を専門とする弁護士,ロバート・ワイヤー氏,ホワイトハウスの電気通信政策局長を務めた弁護士,ヘンリー・ゴールドバーグ氏の4名。

 各メンバーは米国における通信行政,AT&T分割の経緯と効果について次々にプレゼンテーションした。中でも各メンバーが結論として繰り出したのが,携帯電話市場における競争の重要性と米国における電波行政の現状であった。

 ベーカー氏は「AT&Tを地域会社に分割し携帯電話の免許を与えて,AT&Tと携帯で競合させた結果,激しい競争が起こった」と指摘。ヘイズ氏は「日本のワイヤレス市場は競争的とはほど遠い」と題して講演した。「携帯電話の通話料金が日本と同程度に高いのは,先進国では唯一ドイツだけ。ユーザー当たりの売り上げは他国よりも高いのに,日本のユーザーの使用量は他国よりも少ない」(ヘイズ氏)とし,その理由を「日本では上位2社が市場の8割を専有し米国では上位2社で5割に過ぎない」とした。

 また,ゴールドバーグ氏は米国における電波行政について「FCCは使わない周波数は剥奪し再配分する方針である。また,周波数の入札は新規参入や中小企業を優遇している」と説明した。

 ブロードバンド協議会はソフトバンク・グループが中心となって設立した団体。今回のカンファレンスは,会員企業に携帯電話事業の新規参入や競争が激しい米国の状況を告知するのが目的である。ベーカー氏とワイヤー氏,ゴールドバーグ氏の3人は,ソフトバンクが10月に携帯電話の800MHz帯周波数割り当てを巡って総務省を相手取り起こした行政訴訟で,ソフトバンクの弁護団として名を連ねている。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション