平成電電は11月29日,ソフトバンクと日本テレコムを東京地方裁判所に提訴した。訴状では、日本テレコムが12月1日に開始する固定電話サービス「おとくライン」の販売差し止め請求と仮処分命令を申し立てている。平成電電の佐藤賢治社長は,「平成電電の営業秘密を使わなければ,おとくラインは提供できないはずだ」と主張した(写真)。

 平成電電は3月から5月にかけて,ソフトバンクに株式の売却交渉を進めてきた。この際に,平成電電が提供する固定電話サービス「CHOKKA」などの情報をソフトバンクに提供。平成電電は,「ソフトバンクが子会社の日本テレコムにCHOKKAの情報を提供し,日本テレコムがおとくラインを開始する」と見る。ソフトバンクに対しては,平成電電の営業秘密を日本テレコムに開示しないように求めた。

 ただし平成電電は,日本テレコムがどんな営業秘密を利用したかを明らかにしていない。佐藤社長は,「詳細は言えないが,侵害していると確認した」と言葉を濁した。今後の審議日程は未定だが,平成電電の代理人弁護士は「日程の見通しはまだ立たなない。おとくライン開始の12月1日までに仮処分命令は出ないだろう」と説明。日本テレコムは12月1日におとくラインを開始できる見通しだ。

 ソフトバンクと日本テレコムは,「訴状を見ていないで具体的なコメントはできないが,おとくラインの開発は独自で取り組んできたもので他社情報を不正に利用していない。法廷で事実を明らかにしていく」というコメントを出した。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション