DDIポケット(2005年2月2日から社名をWILLCOMに変更)は11月26日,同社の今後の戦略を説明する「WILLCOMのサービスを支える『マイクロセルネットワーク』に関する勉強会」を開催した。今後のサービス展開について,(1)第3世代携帯電話(3G)の商品性をしのぐデータ通信サービス,(2)人・環境に優しいワイヤレス通信,(3)モバイルIP電話の実現――を掲げ,「モバイル・マーケットにおいてオンリーワンの存在を目指す」(喜久川政樹経営企画本部長執行役員)とした。

「マイクロセル」で高速・定額・安全を確保

 (1)について,都市部などユーザーが密集した環境では,PHSのデータ通信速度が3G携帯よりも高速であると説明した。同社が東京・品川エリアと汐留エリアで実施した計測によると,5台が同じ場所で同時接続した場合,DDIポケットのPHSデータ通信(128kビット/秒の品目)のスループットは63kビット/秒だった。一方の3G携帯は,データ・スペック上の通信速度は数百kビット/秒以上にもかかわらず,32k~54kビット/秒程度でPHSデータ通信を下回った。

 喜久川本部長は,この結果はPHSの「マイクロセル」技術のよるものだと説明した。一つのPHS基地局がカバーする範囲は,3G携帯基地局よりも狭い。携帯電話は基地局につながるユーザーで帯域を分け合って利用するため,接続ユーザーが多くなると速度が出にくくなる。有線でいえば,シェアード・ハブに複数のユーザーがつなぎ込んでいる状況とほぼ同じ状況といえる。一つの基地局でカバーするエリアが広い3G携帯では,PHSよりも同時接続ユーザーが多くなりがちなのだ。

 喜久川本部長は「安定して高速通信するにはマイクロセル化が必要になる。PHSは既に16万の基地局を全国に設置済みで,今後は基地局の高度化などでさらに1基地局当たりの容量を増強する」とPHSの優位性を強調した。また携帯電話の基地局の配置には膨大な投資が必要なため,「3G携帯はノート・パソコン向けカード型端末やフルブラウザ付き音声端末を定額化していないし,今後も難しいだろう」(喜久川本部長)と見解を述べた。

 マイクロセルの利点は,端末が放射する電波が低電力な点にもつながる。これが今後のサービス展開で挙げた(2)に当たる。電磁波による人体への影響を示す「SAR値」(小さいほど人体への影響が小さい)が,携帯電話の12分の1~30分の1と非常に小さい。基地局までの距離が携帯電話よりも短いからだ。この特性を前面に押し出し,医療機関や患者やその家族向けに導入を進める意向だという。

モバイルIP電話サービスも「着々と進行」

 (3)を実現するため,同社は基地局と交換機や基地局を接続して音声を通すバックボーン・ネットワークのIP化を進めている。喜久川本部長は「これを利用した『モバイルIP電話』の準備を着々と進めている」と明かした。「すべての通話相手との定額は不可能だが,一定の相手との通話を定額または安価にはできる。モバイル通信では,我々が一番早く提供できるだろう」(同)。現在の音声バックボーンはISDNによる接続で,通話料金は時間に応じた従量課金になっている。

 以前から提供を表明していた256kビット/秒のデータ通信端末は,年末に試験サービスを開始する。商用サービス開始時期は「WILLCOMに社名を変更する来年2月ごろになる見込み」(同)とした。