NTTドコモの中村維夫社長は11月26日の社長会見で,800MHz帯での携帯電話参入を主張するソフトバンクの孫正義社長について,「2006年までによこせという主張は全然話にならない」と困惑した表情を浮かべた(写真)。ソフトバンクの携帯電話参入を巡っては現在,総務省が主催する「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」の場で議論が進められている(関連記事)。

 中村社長は800MHz帯について,「2012年までに700/900MHz帯も含めてより広範に携帯電話システムに利用するという大きな目標のため,3年近くの期間をかけて検討してきた経緯がある。目標達成のために,我々も現在の58MHz幅を30MHz幅に縮小する」と説明。「そのために,第3世代携帯電話サービスを提供中の2GHz帯に利用者を移して,最終的には2012年に2Gの電波をストップするということでやっている」と主張した。

 800MHz帯の再編作業の困難さも強調。「再編は大変な作業で,2012年までにKDDIの空けた周波数帯にNTTドコモが入り,NTTドコモが空けたところにKDDIが入るなど,ぐちゃぐちゃなことをやる」(中村社長)。「その結果,うまくいけば2010年ころに5MHz幅は使えるかもしれないが,孫さんの言うように2006年によこせというのは全然話にならない」とけん制した。

 孫社長が主張する「既存の携帯電話事業者と新規参入事業者は公正な条件(イコール・フッティング)で競争すべき」という点について反論。「(800MHzの再編は)イコール・フッティングとかの問題ではなく,800MHz帯をどうきれいに整理するかという極めて技術的な問題。公正な条件を確保するという哲学の問題ではないということを申し上げている」と強調した。

 「複数の周波数帯を利用するマルチバンド端末を使えば,NTTドコモとKDDIが800MHz帯と2GHz帯にそれぞれ半分ずつユーザーを収容すれば,800MHz帯に新規参入できる空きは作れる」という孫社長の主張にも言及。「周波数が足りない現在の状況を考えれば,マルチバンドは確かに必要。我々も使っていく」(中村社長)。「だが,800MHz帯の再編とマルチバンドは別の話。マルチバンドができるから800MHz帯をよこせ,という孫さんの主張はちょっと分からない」とコメントした。