総務省は11月26日,情報通信審議会に「ユニバーサル・サービス基金制度」の見直しについて諮問した。ユニバーサル・サービス基金とは,不採算地域を含めた全国であまねく電話サービスを提供する通信事業者に対して,他の通信事業者が補助する制度のこと。12月に具体的な検討を始め,2005年10月ころに答申をまとめる予定だ。

 ユニバーサル・サービス基金は2002年6月に,アナログ電話の全国提供を維持する仕組みとして導入した。ところが,これまで一度も発動されていない。地方の不採算地域の赤字と都心の黒字を相殺し,残った赤字を基金で補てんする仕組みであったためだ。基金をもらう立場のNTT東西地域会社は,「電話事業全体が赤字にならないと基金が出ない仕組みとなっており,意味がない」と批判してきた。

 しかも,IP電話の普及が進んだうえ,日本テレコムが12月,KDDIが2005年2月から東西NTTのドライ・カッパーを借りてユーザー宅を直接結ぶ直収電話を始める。電話サービスの競争が進んだことから,東西NTTはユニバーサル・サービス基金の見直しを強く迫っていた。

 今回の見直しでは,(1)基金の対象となるサービス,(2)補てんするコストの算定方法,(3)基金を負担する事業者の範囲や割合--などを議論する。補てんを受ける対象サービスは電話だけだったが,IP電話や携帯電話,ブロードバンド・サービスなども含めて議論する。補てんするコストの算定方法は,赤字と黒字を相殺する方式を採用していたが,赤字部分だけを積み上げる方式なども検討する。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション