総務省の「研究開発戦略委員会」は11月19日,第3回会合を開催した。通信機器や家電機器のメーカー,通信事業者などが参加し,今後の研究開発の方向性を議論している。今回は,松下電器産業,シャープ,ソニー,NEC,富士通研究所などが,研究開発の現状と課題を説明した。

 富士通研究所の津田俊隆取締役は,「今のIPネットワークは,今後の社会インフラとしてはぜい弱。急増するトラフィックに対応できるか,障害復旧などの不安がある」と説明。さらに,「メーカーでは基礎研究が弱体化している上,ユーザーがコスト重視になっており,先端技術を育て上げにくい」と課題を述べた。NECの矢野薫副社長も,「コンピュータ・ウイルス攻撃や停電など,ITインフラにはぜい弱がある。改善するため,次世代IPインフラ技術,フォトニック・ネットワークなどの研究開発が重要」と強調した。

 IPネットワークの課題については,通信事業者も発言。KDDIの村上仁己執行役員技術開発本部長は,「ネットワークのIP化を宣言して,開発や構築を始めたところ。IPの問題意識や技術的課題について,興味が高まってほしい」と述べた。

 NTTコミュニケーションズの飯塚久夫常務先端IPアーキテクチャセンタ所長は,「IPインフラの課題は多く,技術開発で克服すべきだ」と同意した。ただし,「技術とはあまり関係ないが,本当にぜい弱性対策を考えるならインフラが無料になるとか,ネットワークをすべて開放すべきといった今の日本の発想を変えないといけない。例えば,新潟の災害のように物理的な被害が出ても,既存の通信事業者はコストをかけてサービスに影響がないようにインフラを作っている」とNTTグループの主張を述べた。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション