日本テレコムは16日,走行中の列車内から無線LANを使ってブロードバンド接続する実験の結果を公開した。時速120km超で走行する列車内から最大15Mビット/秒で通信できることを確認した。

 実験はJR北海道の協力を得て,同社の千歳線の一部区間で実施した。駅の跨線橋(こせんきょう)やプラットフォーム端などに無線LANのアンテナを設置して,最高時速130kmで走る快速列車「エアポート」の進行方向から見て最後尾に取り付けた無線LANアンテナ(写真,白い丸に見えるものがアンテナ)とIEEE 802.11g規格を使って通信する。列車の車両間も802.11gで接続し,客席からは802.11bでブロードバンド接続できるようにした。

 千歳線の恵庭と長都(おさつ)の間では,複数の無線アクセス・ポイント同士を無線通信させ,そのうちの「集約アクセス・ポイント」からインターネットに接続する「無線中継方式」を試した。この仕組みを使うと,バックボーンに接続するための光ファイバなどが集約アクセス・ポイントに引き込む分だけで済むため,設備投資や設置の手間,運用コストが下がる。このほか,南千歳から新千歳空港間の湾曲したトンネルでも伝送速度などを確認した。

 実験内容は,大きく(1)セル間のハンドオーバーや実効伝送速度などを確認する「基礎伝搬試験」,(2)列車からのWebアクセス,列車内のカメラで撮影した動画の確認,列車からのIP電話発信といった「アプリケーション試験」の2点。その結果,地上区間では悪くても8Mビット/秒,最高15Mビット/秒で通信できることが判明,湾曲したトンネル内でも通信状況は良好だったという。

 日本テレコムでは,「乗務員にPDA端末などを持たせて業務上の情報を配信・集約したり,防犯カメラを使った監視ができる。車内にディスプレイを設置して広告などを配信するようなことも可能だろう。提供中の無線LANアクセス・サービス(モバイルポイント)のようなブロードバンド接続サービスも車内に提供できる」(プロダクト統括本部研究開発本部情報通信研究所の山崎吉晴部長)。同社は今後も列車内でのブロードバンド・サービスの実現に向けて開発を進める。

(山崎 洋一=日経コミュニケーション