日本テレコム,富士通,古河電気工業,東陽テクニカはIP放送を実現する新技術「マルチキャストMPLS」のデモを公開した。デモは11月1,2日の二日間に渡って開催した「MPLS JAPAN 2004」の会場内で実施した。

 マルチキャストとは,一つのパケットを同時に特定かつ複数の受信者に送信する技術のこと。IP放送の実現技術として注目を集めており,ソフトバンクBBの「BBTV」やKDDIの「光プラスTV」が採用している。

 通常のマルチキャストは,マルチキャスト・パケットの配信経路がIPルーティングによって決まる。このため送信者が配信経路を意図的に決められない。だがIP放送を有料コンテンツにする場合,配信経路を管理し一定の品質を確保することは欠かせない。そこで開発が進められているのが「マルチキャストMPLS」である。

 MPLSは,次世代基幹網の基盤技術として注目されているラベル・スイッチ技術。ネットワークを流れるトラフィック量や経路を運用者の意思通りにコントロールする「トラフィック・エンジニアリング」が可能である。マルチキャストMPLSならば,「トラフィックが多く流れ込んでいる経路を意図的に回避したり,インターネット接続などの他のアプリケーションを混在しないように管理することで,IP放送などの品質を高められる」(日本テレコムの松嶋聡氏)。

 マルチキャストMPLSは現在,IETF(internet engineering task force)で標準化作業中で,NTT持ち株会社が議論をリードしている。現在議論中なのは,シグナリング・プロトコルにRSVP(resource reservation protocol)を使い,一つの通信事業者網内に閉じた技術。今回,日本テレコムなど行ったデモではシグナリング・プロトコルにBGP(border gateway protocol)を使い,複数の通信事業者間でもコンテンツのやり取りが可能になる。「今後はIETFへの提案も検討している」(日本テレコムの松嶋氏)と言う。

 MPLS JAPAN 2004は,IP-VPNサービスの基盤技術として使われているラベル・スイッチ技術「MPLS(multiprotocol label switching)」の最新動向を議論する技術者会合。通信事業者や機器メーカーの技術者が参加,運用上の問題点や最新の技術動向などに熱い議論を交わした。

(山根 小雪=日経コミュニケーション