NTT東日本とNTTドコモは11月1日,昨月23日に発生した新潟県中越地震への対応状況について共同で記者会見を開いた(写真)。

 会見では,NTT東日本のネットワーク事業推進本部災害対策室の東方幸雄担当部長が固定電話と専用線,IP系のサービスについて,NTTドコモのネットワークテクニカルオペレーションセンターの一場政美所長が携帯電話についてそれぞれ説明した。

 NTT東日本は,斜面などの崩落による基幹系通信回線の断線被害が目立ったことを明らかにした。特に長岡市の信濃川沿いの崩落現場には,電話や専用線,IP系など通信回線が集中しており,多くの幹線が切断された。この障害は「他のルートにトラフィックをう回したため。通信自体には大きな問題は出なかった」(NTT東日本の東方部長)。しかし現在のところ,同現場に関しては復旧のメドが立っておらず,長岡エリアの中継基幹網や地域IP網の県間網は,引き続き片系での運用を余儀なくされている。

 幹線から各エリアへの支線では,断線のため小国町,越路町,山古志村の3地区・計4450加入の電話が不通となった。このため,「2本のケーブルのうち切断されなかったケーブルにある光ファイバの空き心線を利用したり,切断された地下ケーブルを地上に引っ張り出してう回ルートを設定したりして小国町と越路町を復旧させた」(東方部長)。

 ただし山古志村については,現状も加入電話は不通だ。同村は「村への2ルートの両方が切断されたうえ,全村避難で入村も制限されているため復旧計画が立てられない」(同)状況だという。

 一方,NTTドコモでは通信ケーブルの切断と停電により,延べ60基地局の稼働が停止した。基地局には予備のバッテリーが装備されていたが「最短で数時間で切れてしまう」(一場所長)ため,地震発生後すぐに新潟県内や周辺から電源供給車を合計17台派遣した。現在は電源車両による給電に加えて,各所で電力や回線が復旧。利用できないのはNTT東日本と同様に山古志村の周辺のみとなっている。

 中には電源車両の到着が間に合わず,地震後しばらくたってからサービスが停止した基地局もあった。道路が寸断されていたためだ。そこで「50kg程度の小型発電機を人が背負って持ち込む」(一場所長)ことで電源を確保した基地局もあったという。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション