NTTグループの次世代アクセス回線技術の展示会「つくばフォーラム2004」に,FTTH(fiber to the home)の新技術「3波多重PON(passive optical network)システム」の試作品が展示されている。
1心の光ファイバを複数ユーザーで共用する「PON」技術は,光ファイバにかかるコストを共用するユーザーで割り勘できるため,コンシューマ向けFTTHの実現技術として注目を集めている。通常のPONでは,上り伝送に1.31μm,下りに1.49μmの二つの波長を使いデータ通信する。3波多重PONシステムでは,さらに1.55μmの波長を放送サービスなどのアプリケーションに割り当てられる。1本の光ファイバで双方向データ通信と放送サービスを提供できる。
3波多重は,通常のPON装置に別途WDM(wavelength division multiplexing )フィルタを追加して実現する。会場には,NTTアクセスサービス研究所が独自開発したWDMフィルタが展示中。「3波多重PONシステムは,技術的にはいつでもサービス提供が可能な状態。既存のPON装置でもWDMフィルタを追加することで,放送などのサービスを後付で提供できる」(説明員)。
地上波テレビ放送など多くの放送コンテンツは,IPネットワークでは流せないの現状がある。これは放送局の多くが,著作権保護の観点からIP上で放送を流せないという見解を打ち出しているからだ。3波多重PONシステムは,光ファイバの1波長を放送専用に割り当てて,IPとは別の経路でアナログのまま流す。NTT局と住宅などの間は光ファイバで伝送し,宅内では同軸ケーブルで放送を配信する仕組みだ。
会場ではWDMフィルタのほか,FM変換を利用して1.55μmの波長に放送などの映像コンテンツを流す新方式も提案している。映像をいったんFMに変換して伝送することで,「光ファイバの伝送区間で発生するひずみや雑音を消すことで,高品質な映像配信を実現できる」(説明員)と言う。
つくばフォーラム2004は,茨城県つくば市にあるNTTアクセスサービスシステム研究所で22日まで開催している。参加できるのはNTTグループもしくは取引先の社員のみである。