世界の大手通信事業者が集まり次世代のネットワーク・アーキテクチャを議論する業界団体「Multiservice Switching Forum(MSF)」が開催する,IPv6テレビ電話とIPv4 IP電話の相互接続試験「GMI 2004」が佳境を迎えている(写真)。GMI 2004は10月4日(日本時間)に開始され16日(同)まで続けられる。

 相互接続試験には,NTT持ち株会社,韓国KT,英BT,米クエスト・コミュニケーションズ・インターナショナルの4事業者が実験サイトを提供している。世界4カ国を結び,SIP(session initiation protocol)対応のIPv6テレビ電話とIPv4のIP電話の接続性と品質を確認。複数のメーカーのSIPサーバーや端末間での接続性を確認する。加えて,着信転送や三者通話などの基本機能も確認中だ。

 またNTT持ち株会社は,国内でIPv6テレビ電話でのQoS(quality of service)とセキュリティについても試験中である。QoSではアプリケーションごとの帯域保証機能を確認。セキュリティは,SIPの呼制御を暗号化して通話を実現した。

 NTT持ち株会社がこうした試験を実施しているのは,現状のSIPには呼を確立するまでの間にIPアドレスや電話番号を盗聴される危険性があるなど,セキュリティ面の問題が指摘されているためだ。「IP電話が現状のような付加サービスという位置付けから,適正な料金をもらって提供するサービスに変わるときには,帯域保証やセキュリティが不可欠になる」(MSFのボード・メンバーを務めるNTTサービスインテグレーション基盤研究所の村上龍郎プロジェクトマネージャー)。

 具体的な実験結果はまだ明らかになっていないが,2年前に開催した相互接続試験「GMI 2002」に比べて,「SIPの技術がこなれてきたと痛感している」(村上マネージャー)。GMI 2002では,SIPの仕様の解釈がメーカー間で異なり,「1回ではなかなかつかながらなかった。今回は1回ですんなりつながるケースが多い」(村上マネージャー)という。

 MSFは通信事業者主導でデファクト・スタンダードを決めるために1998年に設立された業界団体。近年は,データと音声を統合する次世代IP網のアーキテクチャを中心に議論を進めている。アーキテクチャに盛り込む要素技術は,IETF(Internet Engineering Task Force)やITU(国際電気通信連合)が標準化したものを採用し,MSFでは標準化作業は行わない。

(山根 小雪=日経コミュニケーション

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