東京電力は8月30日,最大速度が200Mビット/秒の電力線通信(PLC:power line communication)の実証実験を,同日から2005年3月末まで同社の社宅内で実施すると発表した。東京電力によれば,200Mビット/秒は電力線通信では世界最速だという。

 東京電力は既に社宅など4カ所で電力線通信の実証実験を開始済み。200Mビット/秒対応モデムの開発を受けて,内2カ所での実験の許可を総務省関東総合通信局に申請していた。実験では,住友電工が開発した200Mビット/秒対応の電力線通信モデムを利用する。集合住宅を想定した漏えい電磁波の低減技術などを検証する。

 東京電力の電力線通信に対する取り組みは積極的だ。東京電力光ネットワーク・カンパニーの勝又淳旺プレジデントは本誌のインタビューに対して,「2005年秋に,電力線通信の商用サービスを開始したい」と答えている。同社のFTTH(fiber to the home)サービス「TEPCOひかり」でユーザー宅まで光ファイバを引き込み,家庭内のLANとして電力線通信を利用できるようにする方針である。

 電力線通信は,2002年夏に総務省が実用化の判断を先送りにした。実証実験の結果,電磁波の漏えいを確認し,短波帯を利用するアマチュア無線,ラジオ放送,船舶通信などの既存通信に悪影響を与えることが懸念されたからである。

 その後も実証実験の実施については検討が続けられ,総務省では2004年1月から「漏えい電磁波の軽減技術を実装し,他の通信や周囲の設備に悪影響を与えない」などの条件を付けて許可している。8月26日時点で,14事業者28設備での実験が認可済み。今秋以降,実験データを基に実用化するか凍結するかどうか再度議論がなされる見通しだ。

(山根 小雪=日経コミュニケーション