東西NTT地域会社は,ソフトバンク・グループ傘下の日本テレコムが8月30日に発表した固定電話サービスへの参入に警戒心を強めている。日本テレコムは月額の基本料金が200円安いサービスを提供することを発表。東西NTTのメタル回線を借り,電話局に置いた自社交換機でネットワークを構築するというサービスだ。

 NTT東日本は「ソフトバンク・グループが回線を直収し,国内から国際まで備えたフルラインの事業者になるのであれば,現状の(総務省による)規制の前提が崩れる」と規制見直しを強調する。NTT西日本も「各社が直収電話で参入するのであれば,枠組みが変わる。東西NTTの電話の位置づけに影響が起こる」と同意見。

 対抗策については,「サービス内容を精査しているところ」(NTT西)と静観の構えだが,「競争上,必要な手段を考えたい」(NTT東)とも付け加える。東西NTTが“虎の子”の基本料金に手を付ける可能性も出てきた。

 総務省は日本テレコムの自営網による固定電話参入について「行政側が整備した競争環境を利用したもので,サービスについては歓迎」(総合通信基盤局料金サービス課の鈴木茂樹課長)と評価。ただし「ドライ・カッパーの利用は想定範囲内だったが,既存の交換機を使うとは思わなかった」とソフトバンク連合の固定電話は総務省にとっても驚きの面があった。

 また,「接続料の議論は難しくなりそうだ」との本音も。現在の接続料制度は,東西NTTの固定電話網に各社が接続することを前提に作り上げられているからだ。「今後,何らかの形で議論をしていかなくてはならない」(鈴木課長)。今後,東西NTTと日本テレコムなどの通信事業者,総務省との3者間の“攻防”が激しくなりそうだ。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション