名古屋市営地下鉄は今年9月までに,ホームでPDCやcdma2000方式の携帯電話が利用できないようにする。もともとホームは携帯電話の通信エリアから外していたが,「改札階から電波が届いていた」(名古屋市交通局資産活用課)。そこで,アンテナの位置や向きを変えるなどで調整。ホームや車内を“圏外”にした。「問題が起こってからでは遅い」との判断だ。

 「優先席付近では携帯電話の電源をお切りいただき,その他の場所ではマナーモードに設定のうえ通話はご遠慮ください」――。関東圏では2003年9月,関西圏では2004年2月に,鉄道事業者が携帯電話の利用マナーを統一した。

 目的は大きく二つ。一つは通話の声が周囲の乗客に与える不快感を取り除くこと。そしてもう一つが,心臓ペース・メーカーなど医療機器の誤作動への配慮である。総務省と厚生労働省などが共同で行った実験では,ごく一部のペース・メーカーと携帯電話の方式の組み合わせで,影響があるという結果が出ている。

 鉄道事業者各社のルールをみると,特に地下鉄が厳しい(表)。約半数が「常に電源オフ」といったルールを定める。地下鉄ではホームにアンテナを設置するケースがあり,トンネルを抜けた時に車内で強い電波を拾う可能性があるからだ。ただし実情は「ほとんどはルールに従っていないのでは。最後は利用者のマナーに期待するしかない」(複数の事業者)。

 名古屋市交通局の対策は抜本的なものといえる。ただしFOMAなどW-CDMA方式に限っては,逆にこの3月からホームをエリアにするようアンテナを設置している。総務省などの実験で端末とペース・メーカーを約1.4cm離せば安全という結果が出たからだ。「2cmを目安に判断をしている」(名古屋市交通局資産活用課)。もっとも乗客が端末を見て,携帯電話の方式がW-CDMAかどうかを判断するのは難しい。「車内ではメールも通話も不可。混雑時には電源をオフにするよう呼びかけている」(同)。

 各事業者の広報や担当者に聞いたところ,ペース・メーカーの装着者との間で問題が起こったケースはないという。ただし,札幌市などからは端末を見ただけで気分が悪くなるケースも報告されている。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション





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