NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は8月20日,家庭内の電力線をインターネットへのアクセス回線として利用する電力線通信のフィールド実験を始めたと発表した。総務省の関東総合通信局から設置許可を取得。同日から2005年3月まで茨城県つくば市にあるNTT-ATの事業所で実施する。NTTグループがフィールド実験に取り組むのは初めてとなる。
NTT-ATは,漏えい電磁波の低減技術について技術的な見通しが立った,として実験を申請した。具体的には,(1)電力線からの漏えい電磁波を低減させるフィルタ回路の開発,(2)モデムなど通信機器から発生する不要な高周波の低減技術,(3)通信機器の信号出力や周波数帯域の絞り込み――などを組み合わせることで,漏えい電磁波を極めて低いレベルに抑えることができるとしている。
電力線通信を巡っては,2年前に総務省がフィールドでの実験を凍結したという経緯がある。
2002年夏に機器メーカーなどが総務省とともに実施した大規模なフィールド実験で電磁波の漏えいを確認したからだ。具体的には,電柱から各家庭への引き込み線や,サービスを利用している建物から空中に電磁波が漏えいした。そして,アマチュア無線,短波や中波のラジオ放送,船舶通信などの既存通信に対する悪影響の懸念から,実フィールドでの利用が凍結された。
ところが今年1月,総務省は「漏えい電磁波の軽減技術を実装し,他の通信や周囲の設備に悪影響を与えない」などの条件を付けてフィールド実験を許可する方針に転換した。収集データを基に,実用化するか凍結するかどうか再度議論がなされる見通しだ。
NTT-ATのほか現在実験に取り組んでいるのは,電力会社が東京電力と東北電力,九州電力の3社。機器メーカーおよびインテグレーターなどがNEC,ゼルライン・ジャパン,パナソニックコミュニケーションズ,プレミネットとラインコム,松下電器産業,松下電工,三菱電機の8社。中部電力は実験を終えている。