NTTドコモは7月13日,第3世代携帯電話(3G)サービス「FOMA」と無線LANの一体型携帯電話機「N900iL」(NEC製)を発表した(写真)。NTTドコモの法人営業部門やパートナ企業が2004年9~10月をめどに,無線の内線電話システム「PASSAGE DUPLE」(パッセージ・デュプレ)として提供する。端末価格は1台当たり4~5万円程度になる見込み。

 この新端末は待ち受け方法として(1)FOMAモードと無線LANモードの同時待ち受け,(2)FOMAモードでの待ち受け,(3)無線LANモードでの待ち受け--の3通りを選べる。無線LANモードではVoIP(voice over IP)を利用して通話する。オフィス内の無線LAN基地局を経由し,IP-PBXと接続することでコードレス内線電話機として使える。社外では通常のFOMA端末として利用する。

 またWebブラウザを内蔵しており,無線LAN経由でもFOMA経由でもイントラネット端末として利用できる。通話相手が電話に出られるかなどが分かるプレゼンス機能や,インスタント・メッセージの送受信機能も実装する。

 無線LANの通信規格には世界標準のIEEE 802.11b方式を採用。サイズは約102×48×27mm,重さは約120gと現行のFOMA端末並みに抑えている。

 ただし無線LANによる通信は携帯電話の無線通信よりも消費電力が大きく,連続待ち受け時間や連続通話時間が短くなりがちだ。実際,法人ユーザー向けに発売されている無線LAN専用のVoIP携帯電話機では,待ち受け時間が最大でも数十時間程度にとどまっている。

 これに対してN900iLでは,端末の省電力機能や,待ち受け時に基地局からの電波を一定間隔あけて受信する「間欠受信機能」をフル活用。無線LANモード単体で約230時間,FOMAと無線LANの同時待ち受け時で150時間にまで引き上げている。連続通話時間は無線LANモードで約160分である。FOMAモード単体での待ち受け時間は約230~280時間,連続通話時間は約140分。

 N900iLと接続できるIP-PBXは,当初はNECの「SV7000」だけ。ただしNTTドコモは既に2004年3月,複数のPBXメーカーやIPセントレックス事業者に接続仕様を開示している。このためNTTドコモは「端末の発売に前後して,対応するIP-PBXやIPセントレックスは増えていく」(安田準・法人営業本部プロダクトビジネス部第一サービス推進担当部長)とみている。