米エアスペースは,モバイル・セントレックスに不可欠な無線LANアクセス・ポイント(AP)や無線LANスイッチで一躍有名になったメーカーだ。日本ではNECへのOEM供給によって無線VoIP市場で名をはせ,国内にユーザーも多い。同社がシスコシステムズに買収されたことで既存ユーザーへのサポートや今後の製品計画が気になる。買収完了前に,エアスペースの河田英典代表取締役社長(当時)に話を聞いた。(聞き手は大谷 晃司=日経コミュニケーション

——シスコシステムズによる買収が既存のユーザーに与える影響は?

 シスコシステムズに買収されてもユーザーに影響があるわけではない。引き続き既存の販売代理店が取り扱う方向で話が進んでいるからだ。

 日本市場でエアスペース製品をもっとも多く販売していたのは,OEMという形だがNEC。ファームウエアにはNECが独自に追加した機能が含まれており,これらは引き続きNECがサポートするだろう。また,エアスペースとNECの関係は,そのままシスコシステムズとNECに引き継がれる。既存のユーザーに迷惑をかけるようなことはない。

 NEC以外では,マクニカネットワークスや兼松エレクトロニクス,ネットワンシステムズが販売しているが,シスコシステムズ傘下になっても大きな変更はなく関係を継続していく。

——シスコシステムズの無線LAN製品との関係は?

 シスコシステムズの既存の無線LAN製品「Aironetシリーズ」は,“アンテナ中心型”の製品。一方,エアスペースの製品は“コントローラ中心型”の製品。性格の違う製品であるため,当面は並列して販売されるだろう。

 ただし相互運用の点では面白い話も出てきた。エアスペースの製品は,無線LANスイッチと無線LAN AP間の制御プロトコルとしてLWAPP(Lightweight Access Point Protocol)を採用している。これは,インターネット技術の標準化団体IETFがCAPWAP(Control And Provisioning of Wireless Access Points)の名称で策定を進めているものだ。シスコシステムズによる買収が2004年に発表されてから,この標準化にシスコシステムズのバックアップが受けられるようになった。

 例えばAironetシリーズの無線LAN APにCAPWAPが載れば,エアスペースの無線LANスイッチでAironetの無線LAN APも制御・管理できるようになる。

——今後の製品計画は?

 販売代理店が気にしているのがエアスペースが販売してきた製品の後継。エアスペース系列の製品は,シスコシステムズになっても継続して開発・販売する。6月には100台の無線LAN APを管理できる無線LANスイッチを出す予定だ。