アセロス・コミュニケーションズは,無線LANチップ・セット大手ベンダーの日本法人。主力はIEEE 802.11a(11a)向けだが,日本では11aが利用する5GHz帯の周波数は再編のまっただ中だ。11月には,5.25G~5.35GHz帯(4チャネル)と5.47G~5.725GHz帯(11チャネル)の計355MHzを11a無線LANに新規に割り当てることが,総務省から正式に発表された。日本独自規格の「IEEE 802.11j」(11j)として4.9G~5.0GHz,5.03G~5.091GHzが割り当てられることも決まっている。こうした5GHz帯再編の動きについて,アセロス・コミュニケーションズの大澤智喜代表取締役にチップ・ベンダーとしての対応を聞いた。

(聞き手は白井 良=日経コミュニケーション

──5GHz帯の再編をどう評価する。
 これまでのスポット的なサービスだけでなく,携帯電話のような“面”的展開が可能になる点が大きい。現行の5GHz帯の無線LAN規格「IEEE 802.11a」は同時に4チャネルしか使えないうえ,屋外では利用できなかった。屋外でも使える2.4GHz帯の「IEEE 802.11g」は,3チャネルだけ。面的展開に必要とされる8チャネルには足りなかった。
 5GHz帯再編で,11aと11j合わせておよそ20チャネルが屋外で使えることになる。そのうえ11jの4.9G~5.0GHz帯と5.03G~5.091GHz帯はアンテナから出力できる電力が3dB大きくなり,数km単位で電波が飛ぶようになる。つまり携帯電話サービスのような展開が可能な状況が整ったのだ。実際にこうしたサービスに興味を持った日本の通信事業者もあると聞いている。

──今後は5GHz帯が無線LANの主役になるのか。
 そうなるだろう。ユーザーのイメージでは,先に普及した2.4GHz帯が主役にあるかもしれない。だが2.4GHz帯は様々な機器と共用しているので干渉源が多い。日本でも電子レンジなどと干渉するし,米国ではコードレス電話まで2.4GHz帯を使う。一方の5GHz帯は無線LAN専用の周波数帯か,共用していても干渉しないようにする技術を使う。割り当て周波数が増えたこともあり,今後はさらに発展するだろう。
 屋外での高速通信規格としても,5GHz帯の無線LANが主役になると考えている。「WiMAX」など屋外で使うことを前提とした規格も出てきているが,認可が下りる頃には5GHz帯の無線LANが広がってデファクト・スタンダードになっているだろう。通信インフラは技術の優劣だけでは語れない面がある。

──再編により,現行のIEEE 802.11a機器のチャネルが変わるが対応は。
 当社のチップ・セットは,ファームウエアの更新でチャネル変更できる作りになっている。しかしファームアップでのチャネル変更が実際にできるかどうかは,総務省の判断次第だ。