知らないうちにパソコン内の情報をインターネットに送信してしまう「スパイウエア」や,メールとWebで個人情報をだまし取る「フィッシング」──。こうした新しいセキュリティ危機への対策が急務になってきた。セキュリティ対策ソフト「ウイルスバスター」を開発・販売するトレンドマイクロの宍倉豊ディレクターに,最新版「ウイルスバスター」のスパイウエアやフィッシングへの対応状況を聞いた。(聞き手は安井 晴海=日経コミュニケーション)。

──最近,スパイウエアの被害が増えているようだ。

 日本では,スパイウエアに気が付いていないユーザーがまだまだ多い。ウイルスに感染したというユーザーの話を聞いてみると,実際はスパイウエアが原因だったということがよくある。スパイウエアの中でも,ブラウザのアクセス先サイトを勝手に変えてしまうものなどがあり,これをウイルス感染と間違う人が多いようだ。
 こうした状況を見て,10月22日に発売する「ウイルスバスター 2005 インターネット セキュリティ」では,最初からスパイウエア対策を念頭に置いて根底のアーキテクチャから開発し直した。新たに,スパイウエア検出と駆除の機能を盛り込んだ。ウイルスと同様,手動検索とリアルタイム検出を可能にしている。前バージョンの「ウイルスバスター2004 インターネット セキュリティ」では,スパイウエアの検索はできたが駆除はできなかった。

──フィッシング対策についてはどうか。

 フィッシングは,許可したWebサイト以外への個人情報送信をブロックすることによって対処が可能だ。パスワードやクレジットカード番号などをあらかじめ登録しておけば,それらの情報がインターネットに発信される際に,ウイルスバスターがブロックする。情報を出していい正当なサイトについては,「例外Webサイト」として事前に登録しておけばブロックしない。
 またフィッシング・メールは,迷惑メールとして警告を出すことも可能だ。メールの件名の最初に「 [MEIWAKU] 」という文字列が入る。もっとも,これだけではどんな種類の迷惑メールかが分からないので,それを分類して表示できるよう,2004年末ころにアップデートで対応する予定だ。具体的には,フィッシング・メール,架空請求などの有害メール,ダイレクト・メールなどの迷惑メールの三つに分類する。

──これらのほかに新しく追加した機能は。

 ウイルスバスター2005をインストールした複数のパソコンのパターン・ファイル更新状況などを,1台のパソコンで管理できる「ホームネットワーク管理」,不正な無線LAN機器が接続されていないか監視できる「無線LANパトロール」,OSのぜい弱性の有無をチェックし,未修正のセキュリティ・ホールを見つけると警告を発する「セキュリティ診断」などがある。ウイルスバスター2005は,コンシューマ向けの製品だが,これらの機能は専任のネットワーク管理者がいない中小企業やSOHOにも有効だろう。このため,ウイルスバスター2005からは割安な5ユーザー・パックを用意した。
 このように今回のバージョンアップでは,新しいセキュリティ対策機能を満載した。我々としても自信作だ。スパイウエアの駆除,ホームネットワーク管理,無線LANパトロール,セキュリティ診断といった機能は,競合他社の製品にはない。トレンドマイクロは日本に本社がある会社で,日本で製品開発を行っている。日本のユーザーの声を製品に反映するスピードは,競合他社には負けないと自負している。



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