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米マクロメディアは,アニメーションのように動きのあるユーザー・インタフェースを作成・再生する製品「Flashシリーズ」を提供。パソコンで再生するためのソフトは,普及率98%を誇る。Flashは,NTTドコモやKDDIが発売する携帯電話端末にも搭載され始めた。同社のクリステンセン副社長に,Flashが携帯電話端末に載るメリットなどを聞いた。(聞き手は加藤 慶信=日経コミュニケーション)
――Flashが携帯電話でも普及するには,様々なOSに対応する必要がありそうだ。
パソコンのOSはWindowsやMacintoshが主流だが,携帯電話はWindows Mobile,Symbian,各社独自OSなど様々なOSが存在している。マクロメディアはすべての携帯電話向けOSで,Flashが動作するようにサポートしていく。現時点で十数種類のOSで動作を確認済みだ。
しかし携帯電話や家電の分野では,どのOSに対応しているかということは重要でない。この分野で重要なことは,「どんなサービスを提供できるのか」,それを「どんなインタフェースで提供できるのか」ということだ。
――「サービスやインタフェースが重要」を,もう少し具体的に教えてほしい。
ユーザーが使っていてワクワクするような楽しい経験を提供できることこそが,重要という意味だ。「Flash」はそれを実現できる。マクロメディアは,世界中の携帯電話をインタラクティブなマルチメディアの端末に変えてしまおうと思っている。
携帯電話事業者は今,音声収入の減少やデータ通信のビット単価の下落に悩んでおり,コンテンツ・サービスの提供で成長を維持しようと考えている。一方,携帯電話は多機能化やサービスの多様化などが進み,使い方はどんどん複雑になっている。ユーザーはもっと簡単にサービスを利用したいと考えている。
マクロメディアは,Flashを配信するためのサーバー用ソフト「FLASHCAST」も提供している。ユーザーはテレビの番組表のようにサービスの一覧を表示し,そこから興味のあるサービスを選択できるようになる。
――端末メーカーにとって,Flashを採用するメリットは何か?
開発期間の短縮だ。端末メーカーは現状,端末の本体やインタフェースの試作を繰り返して最終的な製品仕様を決めていく。その過程には技術的で,専門的な知識が欠かせない。Flashを使うことで,ユーザー・インタフェースはグラフィック・デザイナーが簡単に作成できる。しかも本体でFlashを利用できるようにすれば,試作したインタフェースをそのまま製品に搭載できる。
開発期間は,Flashを使うことで5~8カ月は短縮できる。同時にFlashの特徴であるインタラクティブな応答も可能になり,インタフェースの質を向上できる。
――パソコン向けのコンテンツをそのまま携帯電話向けに流用できるのか?
流用することは可能だ。Flashは作成したインタフェースやコンテンツのデータをベクター・グラフィックスと呼ぶ形式で保存する。この形式のデータは,表示する画面サイズが小さくなっても,例えば文字を含むコンテンツでも読みにくくなることはない。
長編アニメの場合はデータ容量の大きさが心配だろう。携帯電話のメモリ容量はパソコンよりもはるかに小さいからだ。しかし,Flashが持つ動画を再生しながらネットワークに接続する機能を使うことで,ダウンロードするデータを抑えられる。