Linux、PostgreSQL、Tomcat――。本誌が実施した第8回顧客満足度調査は、オープンソース・ソフトが“定番”の商用ソフトに匹敵する評価を獲得した。オープンソース・ソフトが高い費用対効果を武器に、企業の情報システムに急速に浸透しつつある状況が明らかになった。
今回の調査から調査対象をより小規模な企業に広げた。中堅企業の声を調査結果に反映させるためだ。その結果、「情報サービス会社のシステム構築サービス」部門では、中堅企業のニーズをうまくくみ取ったリコーが首位に躍進した。

(本間 純、松浦 龍夫)

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Part1:総論 強まる低価格志向
Part2:分析編 無償だけではないオープンソースの魅力
Part3:データ編 波乱と無風のまだら模様
第8回顧客満足度調査の方法


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Part1 総論
強まる低価格志向

製品価格やサービス料金など“価格”に対するユーザー企業の不満には根強いものがある。1962社から回答が寄せられた第8回顧客満足度調査の結果は、このことを如実に示している。ユーザー企業の費用対効果に対するこだわりを追い風に、今回の調査では無償のオープンソース・ソフトが軒並み高い評価を得た。

 「昨年秋、LinuxとTomcatを使って基幹系システムを構築したが、非常に満足している。オープンソース・ソフトは商用ソフトと比べてまったくそん色がない」(東京都、3000人以上1万人未満の企業)。

 「オープンソースのOSやミドルウエアの信頼性は昔より格段に向上しており、業務でも十分実用になるレベルに達した。ベンダーはもっとオープンソース・ソフトを使ったシステムを積極的に提案してほしい」(東京都、1000人以上3000人未満の企業)

 この二つのコメントが、第8回の顧客満足度調査の結果を象徴している。今回は、何と言ってもオープンソース・ソフトの躍進が目立った。

 パソコン・サーバーの稼働OS別満足度では、Linuxが堂々の2位に入った。首位のWindows 2000との差は、わずか0.9ポイントである(Part2:分析編を参照)。

 オープンソース・ソフトはミドルウエア分野でも大健闘した。無償であるためランキングでは参考値扱いとしたが、RDB(リレーショナル・データベース)ソフトの「PostgreSQL」、Webアプリケーション・サーバー・ソフトの「Tomcat」が、それぞれの分野のトップに勝るとも劣らない評価を獲得。オープンソース・ソフトが商用ソフトの地位を脅かすまで成長したことを裏付けた。IT関連製品の費用対効果に厳しい目を注ぐ企業ユーザーの支持を集めた。

 本誌はコンピュータ関連の製品やサービスに対する企業ユーザーの評価を明らかにするため、1994年から顧客満足度調査を実施している。8回目となる今回の調査は、大手から中堅・中小に至る1万2540社の情報システム部門を対象に今年5月に実施。1962社から有効回答を得た。IT関連サービスからハード/ソフトまでの全19分野で顧客満足度を算出した。

 前回の調査は、企業ユーザーのコスト意識の高まりを浮き彫りにした(本誌2002年6月17日号の特集「第7回顧客満足度調査:ソフト/サービス価格への不満が爆発寸前」を参照)。その傾向は今回さらに強まり、各製品/サービスの評価を大きく左右した。価格/料金に対する満足度の高さを武器に、新たにランキング上位に付けたベンダーもあった。

 調査結果の詳細は、59ページからの「Part3:データ編」に掲載したが、その前に概要を紹介しよう。

中小企業に強いリコーが1位に登場

 アプリケーション関連サービスの注目株は、「情報サービス会社のシステム構築関連サービス」部門で首位に立ったリコーである(図1[拡大表示])。総合満足度は63.0点だった。「予算の順守度」や「サービスの料金」といった価格/料金関連の項目で高得点を得たことが、躍進の原動力となった。

図1●アプリケーション関連サービス4分野の順位表。企業名横の数値は満足度の点数(100点満点)

 今回調査から調査対象をより小規模な企業に広げたため、中堅企業からの回答が増えたこともリコーにとって追い風になった。同社は、システム部門の陣容が十分とはいえない中堅・中小企業に対して手厚い支援体制を敷いている。

 「メーカーのシステム構築関連サービス」部門は、「サービスの料金」の項目で得点を稼いだ日本ユニシスが64.8点で1位となった。

 日本ユニシスは、「メーカーのシステム運用関連サービス」部門でも66.9点で1位だった。「情報サービス会社のシステム運用関連サービス」部門は、NECフィールディングが72.7点で1位となった。

価格のデルが5連勝

 ハードウエア関連分野の結果からも、価格に対する企業ユーザーの厳しい視線がうかがえる。例えばパソコン・サーバー製品では、「ハードの価格」の項目の重視度(回答企業が「特に重視している項目」として選択した比率)が昨年の0.34(回答企業の34%が選択)から今年は0.42(同42%)へと急上昇した。その結果、価格で競合他社を圧倒するデルコンピュータの強さが際立った(図2[拡大表示])。

図2●ハードウエア関連5製品10分野の順位表。企業名横の数値は満足度の点数(100点満点)

 この分野の製品満足度でデルは67.5点を獲得し5回連続で首位に立った。2位の日本ヒューレット・パッカード(日本HP)には、4.9ポイントの大差を付けている。前回、首位のデルと2位のNECの差は1.4ポイントだった。

 デルのパソコン・サーバーは今回、「ハードの価格」に対する評価で78.4点を獲得した。2位の日本HPに17.8ポイント差を付けた。

 デルの独り勝ちの様相を呈するパソコン・サーバー分野とは対照的に、UNIXサーバー製品分野は、相変わらず混戦が続いている。常連の7社がしのぎを削る接戦を、今年は日本ユニシスが制した。首位と7位の差はわずか5.8ポイントと、前回の8.5ポイントより縮まっている。

 価格に対する低い評価を他で挽回したメーカーもある。磁気ディスク装置の製品満足度で71.7点を獲得し、1位になったEMCジャパンである。同社は「ハードの価格」で46.6点と、この分野の最低を記録したが、「ハードの性能」、「ハードの信頼性」、「制御ソフトの信頼性」といった項目で最高得点を得た。

 EMCはローエンド製品の販売で、デルと提携関係にある。オープン系サーバーに接続している磁気ディスク装置に限ると、EMCとデルが製品満足度でワン・ツー・フィニッシュを決めた。日立製作所をはじめとする国産勢にとって、EMC・デル連合の快進撃は脅威に映ることだろう。

 メインフレームの製品満足度では、日本ユニシスが76.7点で1位となった。オフコン製品では日本IBMが75.1点で1位。2位の富士通に11.8ポイントの大差を付け、貫録をみせた。


第8回顧客満足度調査の方法

 調査対象は中小から大手企業に至る1万2540社の情報システム部門。新興市場を含む、全国の証券取引所に上場している企業、および年間売上高100億円以上(流通業は200億円以上)の未上場企業である。前回は調査票を送付する企業の基準が売上高300億円以上(流通業は500億円以上)だった。

図●回答企業のプロフィール。(従業員数別、業種別)

 調査期間は2003年5月6日~5月23日。有効回答数は1962社で、回収率は15.6%だった。

 従業員数別、業種別の内訳は右に示した。今回から、より規模の小さい企業に調査対象を広げた。従業員数300人未満の企業からの回答が全体の36.1%に達した。業種別では製造業からの回答が36.2%と最も多い。

 調査では、各製品やサービスに対して、9~13の項目別に満足度を質問した。ユーザー企業には,利用している製品やサービスの提供会社を最大3社まで選んで回答してもらった。回答は4段階評価(満足=4、やや満足=3、やや不満=2、不満=1)。項目別の満足度は、各回答をそれぞれ100点、66.7点、33.3点、0点に配点し、100点満点に換算した。

 各設問の回答を総合した満足度は、各項目の満足度を重視度の割合に応じて加重平均し算出した。重視度は、製品やサービスごとに「特に重視している項目」を2~3個選んでもらい、回答企業数の割合を重視度とした。


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