IT関連サービスやソフトウエアの価格/料金にシビアなユーザーが増えてきた。本誌が1年半ぶりに実施した第7回顧客満足度調査は,こうした傾向を裏付けた。
 重視する項目として価格/料金を挙げた回答企業の割合は,システム構築サービスで61%,パソコン・サーバー向けサービスで46%,RDBソフトの製品価格で26%も前回調査より増加している。価格に関する満足度の優劣が総合順位を大きく左右した分野も多い。メーカー各社は,デフレ時代に即して価格体系のあり方を考え直す時期がきている。
 今回の調査は大手・中堅企業7589社の情報システム部門を対象に2002年4月に実施。1485社からの有効回答を基にIT関連サービスからハード/ソフトに至る全19分野で顧客満足度を算出した。NECが大躍進を遂げた。一方,富士通や日立製作所に対する評価は,総じて低かった。ハード/ソフト製品に関しては,新たに「将来性」を設問に加えた。事業戦略が不明確,あるいは迷走気味のメーカーには厳しい評価が下った。

鈴木 淳史,広岡 延隆,星野 友彦


本記事は日経コンピュータ2002年6月17日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。なお本号のご購入はバックナンバー,または日経コンピュータの定期ご購読をご利用ください。


 「担当エンジニアの技量は低下する一方。それなのに,昔と同じサービス料金をきちんと請求される。正当な対価ならば喜んで支払うが,欠陥だらけのサービスでは納得がいかない。他社でも同じようなことが起こっているはずだ。このままではユーザーの反乱が起こるのではないか」(東京都)

 これは本誌が今年4月に実施した「第7回コンピュータ顧客満足度調査」の回答企業1485社から寄せられた意見の一例である。同様の意見はほかにもたくさんあった。

 今回の調査結果を分析すると,製品価格やサービス料金に対する回答企業の評価が前回調査に比べて明らかに厳しくなっているのがわかる。「得に重視している項目」として価格やサービス料金を選択した企業の割合(重視度)は,前回よりも格段に増えた。システム構築関連サービスのように,一気に61%も跳ね上がった分野もある。各分野の重視度の上位にはこれまで通り,「信頼性」や「トラブルへの対応」といった項目が並ぶが,価格やサービス料金に対する関心がかつてないほど高まっているのは間違いない。

ユーザー企業の要求水準とギャップ

 価格意識の高まりは,単に経済環境の悪化だけでは説明できない。「利用している製品/サービスは,価格に見合う価値がない」と判断する企業が増えてきた,と考えるべきだろう。

 システム構築や運用に対するユーザー企業の要求水準は上がり続けている。メーカーや情報サービス会社が提供するサービスとのギャップは広がる一方だ。ハードウエアはオープン系を中心に急速に値下がりしたが,その分ソフトウエアの割高感が増している。

 今回の調査では,IT関連サービスからハード/ソフトに至る19分野の満足度を集計した。製品価格やサービス料金に対する満足度の低さが順位の変動に直結した分野も多い。

 詳細な結果は,「第4部:データ編」で紹介するが,その前に概要を駆け足で見てみよう。

図1●第7回コンピュータ顧客満足度調査で調べた,アプリケーション関連サービス4分野の順位表
(カッコ内は満足度の点数,100点満点)。

 「システムへの投資金額に比べて,得られる効果が少なすぎると感じている。最近は新システムを提案をする際に,経営層への説明に苦慮することが増えている。システム・インテグレータは,ITを使って業務をどう変えるかをもっと提案してほしい」(埼玉県)

 システム投資に見合った効果が得られないことに憤る意見は,回答企業から数多く寄せられた。このことはシステム構築と運用サービスのランキングにも微妙に影響した(図1[拡大表示])。

 今回の調査では,アプリケーション関連サービスから,運用関係に関する設問を切り出して,「システム運用関連サービス」として独立させた。従来のアプリケーション関連サービスは「システム構築関連サービス」に名称を変えた。これまでの調査と同じ,それぞれをメーカーと情報サービス会社に分けて集計しているので,合わせて4分野となった。

IBMが提案力で向かい風を押し切る

 価格や料金に対する目がより厳しくなるなか,システム構築関連サービスで首位に立ったメーカーは,日本IBMである(図1[拡大表示])。

 実はIBMのサービス利用料金に対する評価は非常に低い。メーカー6社のうち最下位である。だがIBMは提案力,業績分析能力といった上流工程に関する項目で他社を大きく引き離した。これらの貯金は,総合満足度において利用料金のマイナスを補うに余りあった。総合満足度は,各項目の満足度に重視度を加重平均して,100点満点で算出している。

 情報サービス会社のシステム構築に関する評価は,NECグループが表彰台を独占した。

 システム運用サービスのメーカー部門は日本ユニシスが初代王者のベルトを巻いた。ユニシスはサービス利用料金で2位のIBMに大差を付けたことが効いて,逃げ切った。

 システム運用サービスの情報サービス会社部門の順位も,サービス利用料金が左右した。1位のNECフィールディングと2位のユニアデックスは,ほぼすべての項目で互角の闘いを繰り広げた。利用料金で10点近くリードしたNECフィールディングが,ユニアデックスを振り切った。

(中略)

 「ハードはどんどん安くなっているのに,ソフト価格がなかなか下がらない。バグ修正ファイルの適用やバージョンアップにかかる作業だけでも,かなりのコストが毎年かかっており,頭を抱えている」(東京都)

 この意見に象徴されるように,ソフトウエアの価格/サービス料金に向ける回答企業の眼差しは非常に厳しくなっている。今回調査では,価格/サービス料金によって,ソフトウエアのランキングが大きく左右された。

 今回は,Webアプリケーション・サーバーに関する満足度を初めて調べた。前回に引き続きRDB(リレーショナル・データベース)ソフト,グループウエア,ERPパッケージ(統合業務パッケージ)の3製品も調査した。RDBソフトはオープン系サーバー向けと独自OS系サーバー(メインフレームとオフコン)向けのそれぞれに分けて集計した。この結果,ソフトウエアは合わせて4製品5分野となった。

価格に引きずられたオラクルとSAP

 オープン系サーバー向けのRDBソフトで日本オラクルが苦戦した。価格と保守サービス料金に対する満足度がそれぞれ27点,30点となり,総合満足度を大きく引き下げた。日本IBMとマイクロソフトに上位を譲った。

 ERPパッケージ最大手のSAPジャパンも価格とサービス料金に対する評価で苦しみ,3位に甘んじた。SAPジャパンの価格に対する満足度は18点と,ERPパッケージだけでなく,調査対象となった全ハード/ソフト製品のなかで最も低かった。

 一方,グループウエアでは,価格の手ごろなサイボウズとネオジャパンの2社が,1位と2位だった。日本IBM(ロータス製品を含む)は,価格とサービス料金の2項目で,平均を大きく下回り7社中6位にとどまった。

 Webアプリケーション・サーバーでトップだったNECは,2位以下を大きく引き離した。


続きは日経コンピュータ2002年6月17日号をお読み下さい。この号のご購入はバックナンバー,または日経コンピュータの定期ご購読をご利用ください。




 今回の顧客満足度調査の調査は4月に実施しました。例年,年末にかけて調査・掲載していましたが,約半年のズレとなりました。これは,昨年の弊誌20周年イベントなどと重なったための措置というのが理由です。“抜き打ち”という意味合いはあまりありません。と,担当デスクの星野に成り代わりご説明いたしました。(鈴木A)