ブルース・グラハム氏

 米BEAシステムズは米IBMや米マイクロソフトと同様、「サービス指向アーキテクチャ(SOA)」の重要性を主張している一社。Webアプリケーション・サーバー「BEA WebLogic Server」を中心にSOAに必要なツール群を拡充している。今年中には、SOAに不可欠なシステム連携ソフトの1つである「エンタープライズ・サービス・バス(ESB)」を製品化し、出荷する予定だ。

 近年は、SOAに基づくシステムを導入するためのコンサルティング・サービスにも力を入れている。日本法人でも、今年3月から体系的なメニューを用意して、本格的な営業活動を開始した。米BEAシステムズでSOAの導入支援サービスを統括しているブルース・グラハム ワールドワイド・プロフェッショナル・サービス担当バイスプレジデントに最新動向を聞いた。

――米国企業は日本よりもSOAに基づくシステムの導入に積極的と聞くが、実際はどのような状況か。

 SOAに基づいたシステムを構築するための有力な手段となるWebサービス関連技術が成熟した2002年末以降、SOAに基づいたシステムを構築する企業が増えている。当社の顧客で言えば、GEのヘルスケア部門やソニー・ピクチャーズ エンタテインメントなどだ。調査機関の米インフォワールドによると、500人以上の企業692社のうち、約25%がSOAを導入済みで20%が評価中という。私がユーザー企業と接した実感もその程度だ。

 2003年前後にSOAに移行したユーザー企業は、すでに次の段階に進みはじめた。複数あるサービスを用途ごとに整理・統合して個々のサービスの再利用性を高めたり、システム構築以後に策定されたWebサービスの標準仕様を取り込んでいる。

 もちろん、米国にもSOAの導入をはじめたばかりの企業もある。こうした企業は、独立した複数のバックエンドシステムを連携させ、コンポジット(複合)アプリケーションとして1つのポータルから利用するところからはじめることになる。

――日本のユーザー企業は、まず何から手を付けたらよいか分からずにいる。

 それは米国企業も同じだ。そのため、当社はSOAの導入支援コンサルティングに力を入れている。実際のシステム構築作業はシステム・インテグレータであるパートナー企業に任せるが、今後どのようにシステムを拡充していくか、というロードマップ作りを手伝う。いわばSOAを導入するためのガイド役だ。

 コンサルティングは(1)SOA調査、(2)SOA検討・計画、(3)SOAプロジェクト実装の3段階で実施する。(1)はWebサイトを通じて顧客企業が質問内容に答えると、その企業がSOAに基づいたシステムを構築する意義があるかを判断する。(2)はその企業がどのような「サービス」をそろえる必要があるかを列挙し、今後のシステム構築ロードマップを提供する。(3)はパフォーマンスや保守性を考慮して、「サービス」を実装するための技術支援だ。

――ビジネス・コンサルティングならまだしも、プラットフォームに関してコンサルティング費用を払う顧客がいるのか。

 確かに、多額のコンサルティング費用をまかなう余裕がないユーザー企業は多い。そこでコンサルティングは低料金で実施している。当社の本業はツールの提供だからだ。(1)のサービスは基本的に無料だ。(2)、(3)に関しても絶対金額は個別相談になるので明かせないが、安価に抑える努力をしている。

 安価にするために、当社のシステム・コンサルティングは2~3人の少人数で実施する。少人数のほうがむしろ機能する。ビルの建築に設計士が何十人も必要ないようなものだ。米国には、「コンサルタントはバスに乗ってやって来る」という例えがある。1回のシステム構築で大人数のコンサルタントを雇うはめになったという意味だが、そういうことは当社のコンサルティング・サービスではありえない。

(聞き手は矢口 竜太郎=日経コンピュータ