東京大学の坂村健教授が所長を務めるYRPユビキタスネットワーキング研究所は、ICタグ・リーダー/ライター端末「ユビキタス・コミュニケータ」を公開した。今回発表した端末は初めての試作機から数えて6代目にあたる。集積度向上による小型化と量産時の低コスト化を狙い、新開発のASIC(特定用途向けIC)を搭載した。今回の開発には「億のケタの上の方」(坂村教授)に及ぶ費用を投じたという。来年度以降、数千台の出荷を見込んでいる。

 ユビキタス・コミュニケータには、13.56MHz/2.4GHzのICタグ・リーダー/ライター、無線LAN/bluetooth/赤外線の通信モジュールが搭載されている。リーダー/ライターでICタグ内部のコードを読み取り、ネットワーク上の商品データベースから説明文や案内ビデオを呼び出すといった用途を想定している。

 新端末には、200万画素カメラを搭載したほか、2次元コードの読み取り機能、VGAサイズのMPEG4動画録画/再生機能を実装した。寸法は高さ144×幅76×厚さ15ミリ、重さ196グラム。きょう体の厚みは従来機の約半分になった。

 同研究所は今後、実証実験を手がける企業や団体向けにこの端末を出荷する。国土交通省が来年4月から神戸市で本格展開する、歩行者誘導実験「自律的移動支援プロジェクト」が数百台を採用する予定である。さらに、坂村氏が主導するT-Engineフォーラムのメンバー企業が来年以降に計画している、30を超える実証実験での採用を見込んでいる。将来は、メーカー向けにASICやリファレンス・デザインを外販することも検討する。

本間 純=日経コンピュータ