米ウォルマート・ストアーズが2005年1月からのICタグ本格採用に向けて着々と準備を進めるなか、他の“超大口”ユーザーの顔触れも出揃ってきた。3月17~18日、米ボストンで開催されたICタグ関連のコンファレンス「Smart Labels USA 2004」では、米国防総省、英小売大手のマークス・アンド・スペンサー、米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)、独運輸大手のDHLなどの事業担当者が続々と登壇し、実証実験の様子や今後の採用計画について語った(詳細は『日経コンピュータ』4月19日号で紹介予定)。

 ここに来て目立っているのは、ICタグの普及を目指す米政府の積極的な行動だ。

 米国防総省は2005年1月から、調達物資の輸送効率や精度を高めるために、輸送に使うケースやパレットにICタグを張り付けることを義務付ける方針。「インスタント食品から戦闘機の部品まで」、物資を納入する業者に指導していく。国防予算が生む巨大なバイイング・パワー(購買力)を背景に市場をリードし、強力にICタグの普及を図る考えだ。米国は前回と今回のイラク戦争で、必要な物資を補給するための後方支援活動に苦労しており、前線で食料の不足を招いたり、見当違いの場所に届いたコンテナをやむを得ず廃棄している。

 今回の会議では、米食品医薬品局(FDA)が今年2月4日に発表した報告書「COMBATING COUNTERFEIT DRUGS」も大きな話題となった。米国では、正規の商品にカプセルやパッケージの外観を真似た、偽造医薬品による医療事故が急増している。例えば1997~2000年の3年間では5件の事故が起きたことが明らかになっているが、2001~2003年では21件にも上った。最近ではフロリダ州で死者が出たことが大きく報道され、社会的な問題になっている。

 そこで同局は医薬品業界に対して、段階的にトレーサビリティの確立に取り組み、2007年までに全面展開するように求めた。バーコードなどの利用も認めているが、特にICタグについては、技術開発も含めた積極的な行動を促している。5大薬品メーカーの(最高責任者(CEO)を集めて直接要請したという。

(本間 純=日経コンピュータ 米ボストン発)