ミラクル・リナックスの
佐藤武社長(左)と
レッド・フラッグ・ソフトウエアの
趙暁亮代理総裁(右)

 日本オラクルのLinux関連子会社であるミラクル・リナックスと中国のLinuxディストリビュータ、レッド・フラッグ・ソフトウエア(北京中科紅旗軟件技術)は1月15日、東京都内で開催した記者会見で、共同開発するLinuxディストリビューション「Asianux」(アジアナックス)の詳細を明らかにした。両社は1月7日に日中共通のLinuxディストリビューションを共同開発することで提携したと発表している。

 両社は、Asianuxをミラクル・リナックスの「MIRACLE LINUX V2.1」とレッド・フラッグの「Red Flag DC 4.0」を元に開発する。いずれの製品も実際には米レッド・ハットの製品をベースにしており、Asianuxもレッド・ハットの最新製品「Red Hat Enterprise Linux 3」をベースにしたものになるという。レッド・ハット製品との主な違いは、ハードウエア/ソフトウエアの動作検証(サーティフィケーション)やサポートである。

 1月末にはインストール可能なアルファ版(非公開)、3月にはベータ版ができる予定。5月末には正式版が完成し、これをミラクル・リナックスが「MIRACLE LINUX V3.0」、レッド・フラッグが「Red Flag DC 4.1」として発売する。Oracle製品の動作検証はベータ版の段階から開始する。製品発売時には、Oracle 9iは動作検証済みの予定だが、Oracle 10gの検証は若干遅れる可能性があるという。

 当初の製品はサーバー向けだが、Asianuxベースのクライアント向け製品も検討している。現在、Linuxクライアントの日本での市場性を調査中だ。これが実現すれば、これまでサーバー向け専業だったミラクル・リナックスが、クライアント向けにも乗り出すことになる。なお、レッド・フラッグはクライアント向けの製品も持っており、将来はAsianuxベースに移行するという。

 こうした統一ディストリビューションの先例としては、独スーゼ・リナックス、米ザSCOグループ、ブラジルのコネクティバ、ターボリナックスが共同開発している「UnitedLinux」がある。ミラクル・リナックスの佐藤武社長は「UnitedLinuxは実際にはスーゼが引っ張っている。Asianuxでは両社は対等の関係だ」と違いを語る。日中だけでなく将来はアジアの統一Linuxを目指しているため、現在、韓国のLinuxディストリビュータにも声をかけているという。

 ちなみに、ミラクル・リナックスは以前、レッド・ハットと提携してレッド・ハット製品を販売していたが、2003年6月に提携を解消した。その理由を佐藤社長は「エンタープライズ向けのサポートに対する考え方に違いがあった。ミラクル・リナックス単独の方が迅速なサポートができると判断した」と語る。現在もレッド・ハット製品を流用していることに関しては「Linuxは(配布や改変が自由な)GPLなので問題ない」という。

大森 敏行=日経コンピュータ