「当初は、顧客から当社の将来を心配する電話がひっきりなしに掛かってきたが、7月半ばにはパッタリなくなった」――。日本ピープルソフトの加賀山進社長は9月2日、都内のホテルで開催した記者懇談会で、買収騒動で顧客企業の間に広がった動揺は既に収束したとの見方を示した。

 親会社の米ピープルソフトは今年6月、米オラクルによる敵対的買収計画の発表に揺れた(関連記事1)。加賀山社長は、「米オラクルは、買収後にピープル製品の新版を出さないと表明したことで、我々の顧客の怒りを買った。既にピープル製品を導入した企業にとって、オラクル製ERPへの移行はそう簡単な作業ではないからだ」と当時の状況を説明する。加賀山社長によれば、NTTやトヨタ自動車といった大口顧客はオラクルの買収計画の発表後すぐに、ピープルへの支持を表明したという。

 ピープルの顧客が落ち着きを取り戻しつつある背景には、米オラクルが反トラスト法審査などで動きを封じられており、ピープル買収計画の実現が日に日に難しくなっているという判断もあるようだ。

 なお、米ピープルは8月29日、米JDエドワーズの合併を完了した(関連記事2)。このことを受けて、日本ピーブルは10月1日をめどに日本ジェイ・ディ・エドワーズとブランドを統合する。旧JDエドワーズの製品名にPeopleSoftの名を取り入れる。また数カ月以内に移転先を確保したうえで、東京・三軒茶屋にある日本ピープルソフトのオフィスと、六本木にある日本ジェイ・ディ・エドワーズのオフィスとを統合する計画だ。現在の従業員数はそれぞれ約120人と約80人で、統合後は200人体制となる。このうち、コンサルティング営業担当者が約100人を占める。

 加賀山社長は「人材管理に強いピープル、生産管理に強いJDエドワーズは最良の補完関係。ソフトウエア・コンポーネントを相互に移植することで、既存顧客に提供できる機能の幅が広がる」とする。米ピープルは、9月14日に米国で開催するユーザー・カンファレンスで、経営統合後の製品ロードマップを明らかにする予定である。

本間 純=日経コンピュータ