携帯情報端末「Palm」を開発・販売する米パームのアラン・ケスラー氏COO(最高執行責任者)が来日し,「Palmはこれまで個人の生産性を向上させるツールとして成長してきた。今後は,複数のユーザーがインターネット経由で情報を共有し,コラボレーションするためのツールに進化させる」と語った。パーム コンピューティング日本法人(http://www.palm-japan.com/home.html)はコラボレーション・ツールとして,Palmの企業向け販売を強化していく。

 その具体策として,Bluetooth準拠の無線通信機能を提供する。2001年末までに出荷するPalm OSの新版(バージョン4.0)を搭載した端末は,企業向けを意識している。新版のOSは,無線を使ったデータ通信や近距離無線通信のBluetoothなどが利用できるようになる。既に無線通信機能付きのパーム機が使われている米国では,営業活動の支援システムをパームから利用している事例があるという。

米パームのロペス氏 「営業担当者が客先で在庫情報を確認して,発注処理をしたり,注文の状況を確認するのに使われている。Bluetoothを使った通信機能はまだ搭載されていないが,パソコンを利用せずにPalm端末間で業務関連のデータをやり取りするのに役立つ」と米パームでPalm OSの事業展開やパートナ向けサービスを担当するガブリエル・アコスタ・ロペス シニアディレクターは力説する。同氏は,以前,米アップルで,伝説のPDA「Newton」の開発に従事した経験を持つ,歴戦のエンジニアだ。

ソニーが試作したGPSアンテナ内蔵のPalm機 米パームは,アンテナを内蔵した無線通信機能付きのPalm機も2001年内に出荷する。ソニーは今回の会議に,メモリスティック用のスロットに挿入するGPSアンテナを組み込んだPalm機を参考出品しており(写真),年内に正式出荷する。地図ソフトと組み合わせて業務に利用することが可能になる。

 さらにコラボレーション機能をアピールするために,ユーザーが情報を共有するためのポータル・サイトを強化していく。これは,インターネット経由で予定表やアドレス帳などの情報を共有するためのポータル・サイト「MyPalm」。日本では,早ければ今夏からサービスを開始する。米国では2000年12月からMyPalmのサービスを提供している。
 
 企業向け販売の強化策としては,「日本国内のシステム・インテグレータとも協力関係を一層強化していく」(ロペス シニアディレクター)。パームはシステム・インテグレータに対して技術サポートや販売面で協力する。現在,国内で提携関係にあって企業向けのモバイル・システムの構築を手がけるベンダーは日本アイ・ビー・エムだけだった。

 ブランドの確立にも力を注いでいく。「Palm powerd」というロゴを,Palm OSが稼働する他社機にも付けてもらい,パームというブランドをアピールしていく。パームはPalm OSが稼働する他社機を競合製品ではなく,「ユーザーのための選択肢」と位置付けている。「Palmのブランドを確立することで,われわれのメッセージがより明確にユーザーに伝わるようになると考えている」(ケスラーCOO)。

 なお,ロペス シニアディレクターは,開発者会議「PalmSource」イベントの責任者も勤めている。前職は米アップルコンピュータのNewton Systemシニア・マネージャ。Newton MessagePadのサードパーティ・ディベロッパやライセンス先のサポートなどを担当していた。

森 永輔,坂口 裕一=日経コンピュータ編集

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