インターネットの標準化機関Internet Engineering Task Force(IETF)の電子メール向け送信元認証技術を検討するワーキング・グループMTA Authorization Records in DNS Working Group(MARID WG)は,米Microsoftが提出していたスパム対策仕様「Sender ID」を標準規格として採用しないことを決定した。電子メール技術の業界団体Internet Mail Consortiumが米国時間9月11日に明らかにしたもの。

 Sender IDは,Microsoft社の「Caller ID for E-mail」と,米Pobox.com共同創業者のMeng Wong氏が開発した「Sender Policy Framework(SPF)」を統合した仕様。電子メールの発信元を確認することで,フィッシング,スプーフィング(なりすまし),スパムといった電子メール詐欺の防止を目的とする。インターネット標準規格とするため,Microsoft社はSender IDをIETFに提出していた。

 同WGはSender IDを構成するMicrosoft社の特許を問題視しており,「“該当特許は無視すべきではない”との大まかな合意に達した」(同WG)。問題の特許は公開されていないため,同WGのメンバーは仕様と関係するクレームを特定できない状態にあるという。「こうした状況なので,共同議長は“当WGは該当特許でカバーされると考えられる代替アルゴリズムの開発を進めるべきではない”という意見で一致した」(同WG)

 今後の状況については,「特許のクレームや関連ライセンスが変更されれば,当WGの見解も大きく変わる可能性はある。そうなれば,新たな検討を行う条件がそろう」(同WG)とする。

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