オープンソース団体Apache Software Foundation(ASF)は,電子メール認証技術「Sender ID」に関して「ライセンス条件が障害となりサポートできない」,とする姿勢を米国時間9月2日に明らかにした。これは,ASFが,同技術の標準策定に取り組むIETFのMARIDワーキング・グループのメーリング・リストに対して送った公開書簡で明らかにしたもの。

 ASFは,書簡で「オープンソースの電子メール技術を開発する者として,特定の企業がインターネット・インフラの中核となるものに知的財産の権利を認められるべきではないと考えている。ライセンス問題が修正され,受け入れられるものになるまでSender IDのサポートは実装しない」と明確に姿勢を示している。

 同書簡では,Sender IDについて「現行のライセンスでは,オープンソースと共存できない。これは,オープンなインターネット標準に反しており,特に『Apache License 2.0』と矛盾している」としている。同技術に関してMicrosoft社の特許使用料は無料だが,ASFのプロジェクトがSender IDをするとなるとライセンスに含まれるいくつかの条件が障害となる。そのため,現行のライセンス条件の下で同技術を実装することは無いと説明している。

 Open Source Initiativeの法務担当責任者であるLarry Rosen氏の分析によれば,Microsoft社のライセンスでは,Sender IDを製品に組み込むメールサービス・プロバイダは,Microsoft社に顧客が同技術を使用することを伝える必要が生じるという。また,Microsoft社は,Sender ID技術の特許権を請求しているとされているが,IETFに対して出願中の技術を説明していない。同社のライセンスは,オープンソース開発グループに合わないものであり,ユーザーは,米国の輸出規制に従わなければならなくなるといった懸念事項も挙げられている。

 米Sendmailは,前日Sender ID機能をサーバーに追加するためのオープンソースのメール・フィルタ(milter)を発表している。同モジュールはオープンソースで公開されているが,ユーザーは,Mecrosoft社のライセンス条件に同意しなければならない。

 Sender IDは,Microsoft社の電子メール認証に関する技術「Caller ID for E-Mail」を,米Pobox.com共同創業者のMeng Wong氏が開発した「Sender Policy Framework(SPF)」と統合した仕様。現在は,IETFのMARIDが策定に取り組んでいる。Sender IDは,電子メールの発信元を確認することで,フィッシング,スプーフィング(なりすまし),スパムといった電子メール詐欺の防止を目的とするもの。

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