米BBN Technologiesと米ハーバード大学(Harvard University)は,量子暗号ネットワーク「DARPA Quantum Network」を構築し,マサチューセッツ州ケンブリッジ内の施設間を光ファイバで接続することに成功した。BBN社が米国時間6月3日に明らかにしたもの。この種のネットワークの実現は「世界初」(同社)という。

 インターネットなどを介して情報をやり取りする場合,盗聴防止のため暗号が使われるが,現在の暗号技術は,複雑な数学的アルゴリズムを応用し,メッセージを暗号化/復号化する。しかし「こうした暗号によって得られるセキュリティは高いものの,完全とはいえない」(同社)。それに対し,DARPA Quantum Networkは量子暗号によって生成した鍵を使ってメッセージの暗号化と復号化を行うので,通信にオープンなインターネットを使っても極めて高いレベルのセキュリティを確保できるという。

 量子暗号では,メッセージの暗号化/復号化に使う暗号化鍵を細かく分割し,それを1つ1つ光子に割り当てる。そして,光子を光ファイバや空中を介して送ることで鍵を受け渡す。鍵を表現する各光子は極めて微弱なため,途中で盗聴されると状態が変化する。そのため,鍵の受け手は盗聴されたかどうか知ることができ,盗聴された場合には安全でないと判断してその鍵の使用をやめる。こうすることで,常に安全な鍵を使って暗号化/復号化が行えることになる。

 同社は,多対多の量子暗号システムを網状に接続された受動光スイッチと暗号化鍵リレーで実現するために,プロトコルを開発した。「(このプロトコルにより)大規模で確実な量子暗号ネットワークの実現が一歩近づいた」(同社)。なお同社は,同プロトコルの特許を申請している。

 現在DARPA Quantum NetworkはケンブリッジにあるBBN社とハーバード大学のあいだを結んでおり,「まもなく同じケンブリッジ内のボストン大学(Boston University)も接続する」(同社)という。

 なお同ネットワークの研究に対し,米国防総省高等研究計画局(DARPA)が資金を提供している。

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