【 第1回 】 マネックス証券・松本社長,大いに語る

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雑誌大好き人間

 話は変わりますが,こういうお仕事をされていて,激務でいらっしゃるので,夜に人と会うときに情報を仕入れたり,あるいはインターネットでも仕入れられると思いますが,ベストセラー本などの書籍はお読みになりますか。

松本 単行本はめったに読まないんです。雑誌は大好きで。

 例えば?

松本 雑誌は見出しを見るのが一番好きで。何か買って読むのではなくて……。

 新聞の雑誌広告や中吊りですか。

松本 あるいは,雑誌の多い本屋さんへ行ってバーッと見るんですけどね。中吊りとか新聞の下のほうのもよく見ますね。だから,ポスト,現代,新潮,文春は,大体毎週,そのうち2冊ぐらいは目を通しますけれども。

 実際に買って目を通すんですか。

松本 買ったりしますね。でも,本屋さんに行ってバーッと表紙の見出しを見て。

 でも,最近の雑誌を見ると,斬新な切り口は余りないんじゃないですか。

松本 いや,そうでもないですよ。『サイゾー』とか面白いですよ。

 そうですか。単行本や文庫本は余りお読みにならない。

松本 全然読まないわけでもないんですが,読むとしたら最近の本ではなくて,ヨーロッパの古典だったり,日本だと古今和歌集とか僕は好きなんですけど。

 そんなに古いものですか。

松本 あるいは,小説。

 例えば。

松本 僕は阿佐田哲也とか大好きなんですが。

 『麻雀放浪記』ですか?。

松本 『麻雀放浪記』は余り読みませんけど,長いので……。

 『ああ勝負師』とか。

松本 その手の本を結構読みますね。

 それは,もしかして松本さんが前職の外資系証券会社でトレーダーをやられていたことと関係ありますか。

松本 それはあるでしょうね。

 勝負事がお好きでいらっしゃる。

松本 好きですけどね。あとは,谷崎潤一郎とか,永井荷風とか,坂口安吾とかですね。

 いいですね。

松本 偏っているんですけれども,そういう単行本はたまに読むんですが……。

 いわゆるビジネス書というのは読まないですか。

松本 読まないですね。

 それはゴールドマン・サックス時代にさんざん読んだとか。

松本 いや,生まれてこのかた,ほとんど読んでなくて。

 そうですか。ピーター・ドラッカーやマイケル・ポーターといった類の本は……。

松本 1冊も読んだことはないです。

 そうですか。今のビジネス・パーソンの多くは,そういったビジネス書を読んでいるようですが,どう思われますか。

松本 ビジネスマンが書いたビジネス書というのは参考になるんだと思うんですけど……。ただ,エコノミストが書いたのは,基本的にはあまり当てにならないと私は思っていて。間違っているかもしれませんけれども,僕はそう思っていて。ビジネスマンが書いたものは,それなりに経験に基づいていて勉強になるとは思うんですが,大体は成功した人が書きますよね。

 そうですね。

松本 多くの場合,失敗したケースのほうが勉強になることは多いと思うんですよ。ただ,失敗した人はめったに書かない。『社長失格』という本がありますけど,読んだことはありません。板倉雄一郎さんでしたっけ。

 はい。

松本 そのくらいであって,古今東西,あまりないんですよ,失敗の本というのは。

 「社長失格」は読まれたんですか。

松本 読んでないんです。

 時間があれば読みたいですか。

松本 友達がくれたので,ぱらぱらと目次ぐらいは見たんですけど,まだ読んでません。結局,失敗した人が書いた本というのは少なくて,そっちのほうが多分勉強になるんじゃないかなと思いますけど。

 そうですか。本と関連するんですけれども,座右の銘というか,好きな言葉は何でしょう。余り深く考えないで,ふだん思っていることを一つ挙げるとすれば。

松本 余りないんですけど……。適当な性格なもので,「成せば成る」という言葉がありますよね。あと,「成るようにしか成らない」ということもありますよね。そのときそのときで,都合のいいほうを座右の銘にしてしまっているみたいな,そんな感じなんですけど。

 “ケセラセラ”というやつですか。

松本 基本的にはそういうことなんでしょうね。私が子供のころ,おふくろがよく「ケセラセラ」を歌いながら掃除をしていましたけど(笑)。