新サーバーOSのWindows Server 2003が,米国では4月24日に発表された(記事へ)。日本でもまもなく出荷開始の予定だ。その一方で,2世代前のサーバーOSであるWindows NT Server 4.0のサポートは2004年末,つまり,あと20カ月で打ち切られる。

セキュリティ・パッチの提供期限が明らかに

 NT Server 4.0のサポート完全終了期限は,Webサイト上にある「Windows NT Server 4.0の製品販売期間と製品サポートに関するガイドラインについて」と題するページで2003年1月28日に公表された(該当サイト)。(1)セキュリティ・パッチ,(2)オンライン・サポートの提供,(3)プレミア・サポートとプロフェッショナル・サービスなどの有償サポート――以上の各サービスの提供期限が2004年末であることを明らかにしている。

 有償サポートの終了は2001年12月に発表した期限を1年間延長したものだが,ほかは初めて明らかになった。この中で注目すべきは,セキュリティ・パッチの提供期限が明確になったことだ。最近では,セキュリティ・ホールを突いて感染を広げるコンピュータ・ウイルスは珍しくない。不正アクセスでもセキュリティ・ホールを狙う攻撃は常とう手段である。セキュリティ・パッチがないOSを使うことは,これらの脅威に対して著しくぜい弱になることを意味する。

 実際に攻撃がなくても,セキュリティ・パッチのないOSを使っていることが取引先などに知られれば,それはまた問題になる可能性がある。パッチのないOSの入ったマシンが悪意のある人間やウイルスに乗っ取られ,そこからネットワーク経由で取引先などにまで攻撃が及ぶ可能性があるからだ。公開サーバーとして使っていないからといって,安心はできない。

最終的な決断を迫られるNTユーザー

 もちろん,このように大きな影響がある決定は突然なされたわけではない。これまでマイクロソフトは前記したWebページなどでNT Server 4.0の製品販売やサポートの終了期限を段階的に公開してきた。販売関係では企業向けボリューム・ライセンスとパッケージ,プリインストール用OEMライセンスが,サポート関係でもフル・サポート体制は既に終了している。現在は代理店経由のOEM販売と,一部の有償サービスが残っているだけだ。セキュリティ・パッチの提供終了も1年以上前に予告するとしており,1月28日の公表はこうした一連の政策の延長線上にある。

 これらの販売制限やサポートの縮小は,どちらかといえばNT Server 4.0の新規導入が難しくなるぐらいの意味あいだった。過去に導入して正常に稼働しているNT Server 4.0には手を付けなくてもよいととらえるユーザーが多かっただろう。しかし,1月28日に公表された内容は,それを一変させた。問題なく稼働しているNT Server 4.0さえも移行が必要になることを意味しているからだ。

 それでは,NT Server 4.0のユーザーは移行に際して,どのような作業をどのようなスケジュールで行う必要があるだろう。

 まず現状では,基本的にNT Server 4.0の導入を避けることが適切である。やむを得ずNT Server 4.0を導入するのは,故障などで急にマシンを入れ替え,そこでNT Server 4.0用のアプリケーションを使う必要がある場合など,ほんのわずかにとどめたい。並行して,サポート終了の日程をにらみながら稼働中のNT Serverマシンの移行計画を作成する。

 サポート関係では,2003年末が1つの節目になる。既に2002年末で無償サポートは終了しているが,2003年末には有償のプレミア・サポートとプロフェッショナル・サービスの契約者がバグ修正用のホットフィックスの開発を要求できなくなるからだ。既存のシステムを手直しするなど,ホットフィックスが必要なトラブルが出そうな作業は2003年中に終えたい。

 そして2004年末までには,あらゆるNT Serverマシンを他のOSに移行できないかを検討する。2005年1月からは,マイクロソフトはNT Server 4.0に関する一切のサポートを提供しなくなる。ふさげないセキュリティ・ホールがいつ出るかもしれない不安とサポートなしでのメンテナンス負担を覚悟できるシステム管理者は,決して多くないだろう。

移行計画は早めに,そして慎重に

 移行計画は,こうした事情を十分に考えて練りたい。移行計画の着手が遅くなるほど,余裕がなくなる点に注意したい。NT Server 4.0サポートが切れるまであと20カ月。それほどの余裕はない。慎重に計画せずに移行を実施しても手間がかかるだけである。

 時間に余裕があれば,機能を追加した新しい情報システムを構築する,Active DirectoryなどWindowsの新機能を使って管理を一元化する,など積極的な目的に比重を置いた計画を作成できる。しかし,2004年末に近づき時間がなくなってくると,サポート切れやハードウエアのリース切れへの対処のためだけの移行計画になってしまう。

 一般的に,OSのようなインフラは新システム構築などのタイミングで移行するのが理想である。予算も比較的豊富で,新しいシステムではOSやアプリケーションを最新バージョンにそろえることが容易だ。

 新システムを構築する計画が近々なくとも,リース切れなどでハードウエアを入れ替えることが2004年末までにあるなら,その機会を活用してOSを移行しよう。予算はあまり多くはとれないかもしれないが,マシンの入れ替えと同時にOSを変えることでパフォーマンスの向上などが期待できる。

 2004年末までに新システムの構築もなく,ハードウエアのリース切れもないという状況でも移行は必要である。このときも移行に早めに着手すれば,余裕のある時間を使って,こつこつと移行作業が行えるはずだ。

 確かに,景気低迷で予算は少ないし,OSの移行だけの作業では優先順位を高くできない。かといってギリギリまで移行作業を怠っていては,時間もお金もない状態に追い込まれ,どうすることもできなくなる。

2004年末までに,まとめてとれる移行期間は意外に少ない

 当然だが移行計画は,作業が2004年末以前に終わるように作る。それには移行作業の終了日を先に決めることから始めたい。一般に,移行作業の実施日は意外と自由に選べない。多くのユーザーがシステムの移行を実施するのは,お盆休み,年末・年始,連休などだ。2004年末までにそうしたまとまった休みは数えるほどしかない。

 小規模システムなら通常の週末でも移行作業は可能だが,不測の事態でシステムが止められず,延期が必要な場合には備えたい。作業終了日を決めたら,そこから逆算していつから移行プロジェクトを開始する必要があるかを考える。

 現状調査から含めると,移行プロジェクトは,長いもので1年間程度かかる。大まかなイメージとして「設計に入るまでの調査,方針決定に半年,設計と移行作業で半年。全部で1年あれば大抵は十分」(日本ヒューレット・パッカード)。サーバー10台以上のシステムなら,サーバー台数による違いはあまりないという。

 短い場合では1週間で済むケースがある。「プライマリ・ドメイン・コントローラ兼ファイル・サーバー1台とクライアント5台なら,月曜に打ち合わせをしてユーザーの要求をまとめ,金曜日までに設計の機材の手配を済ませる。週末に移行作業を実施。全部合わせて1週間でできる」(大塚商会)

 Windows NT Server 4.0のサポートは2004年末で終了する。Windows 2000 Serverや2003 Serverにアップグレードするにせよ,他のOSに移行するにせよ,ユーザーは早急に最終的な決断を下す必要がある。

 Windows NT 4.0 Serverのサポート完全終了まで,あと20カ月――。

(茂木 龍太=日経Windowsプロ)

「日経Windowsプロ」2003年5,6月号ではシリーズ特集「NT Serverの寿命に備える」と題してNT 4.0 ServerからWindows 2000への移行事例や,Windows 2000/2003移行時の技術的課題をまとめています。これから移行計画を練るシステム管理者の方は,ぜひ参考にしてください。