全体の8割弱が何らかの資格を取得済み,取得理由は「スキルアップ」が6割でトップ,難度の高い資格の取得者は年収も高い──日経ITプロフェッショナルが実施した「IT資格に関する意識調査」では,これまであまり明らかにされなかったIT資格取得状況が浮かび上がった。
調査の目的は,どのくらいのITエンジニアがどんな資格を取得しているのか,ITエンジニア自身が資格をどう捉えているのかなどを調べることだ。実施期間は2月3日から2月17日までで,Webサイト(IT Pro)を使って実施した。
その結果,4303人から回答を得た。IT Proの読者にもご協力をお願いしている(関連記事)。ご協力いただいた皆さんに,この場を借りて感謝したい。詳細な結果は日経ITプロフェッショナル4月号特集「IT資格を使いこなせ!」で掲載している。ここでは特に興味深い調査結果に絞って紹介しよう。
8割弱が資格を取得済み
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図1 IT資格の取得状況(回答者は4303) |
結果は図1の通りだ。全体の8割弱に当たる77.7%の回答者が,何らかの資格を持っていると回答した。「持っていないが,今後取得したい」と答えた人は17.7%である。逆に「持っていないし,今後も取得しようと思わない」と答えた人は,わずか4.6%にとどまった。
この結果を年齢別に分析してみると,ある傾向を見て取れる。資格を持っている回答者の割合は,年代が上がるにつれて低くなっている。IT資格には技術系のスキルを認定するものが多いため,技術系の仕事に携わる若い世代ほど,資格を取得しているケースが増えているのだろう。
一方,「今後取得したい」と答えた人の割合は,どの年代でもそれほど変わらない。年代が上がれば技術系に比べて,コンサルティングやマネジメントといった仕事の比重が増えてくる。こうしたスキルを身につけるために資格を重視していることが分かる。
「情報処理技術者試験」が上位を占める
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表1 取得者が100人以上いる資格(回答者は3340。複数回答) |
ITベンダーの中には新人教育の一環として,これら情報処理技術者試験の取得を義務付けているケースも多い。今回の調査結果では,ITエンジニアにとっての「基本」として,情報処理技術者試験が広く普及していることが裏付けられたと言える。
6割が「スキルアップ」を目的に
次に回答者がどういった理由で資格を取得しているのかを紹介しよう。資格取得者に取得理由を尋ねてみたところ,「自分のスキルアップに役立つ」との回答が最も多かった(59.8%)。以下,「自分が身に付けている知識やスキルを客観的に示せる」(49.3%),「将来のキャリアアップに役立つ」(31.7%)と続いた(図2)。
実際,取得者は資格を取得した利点を実感できているようだ。調査では「資格を取得したことで実感した利点は何か」も尋ねている。1位は「自分のスキルアップに役立った」(66.2%),2位は「その製品や技術の体系的な知識が身に付いた」(41.2%)となった。
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図2 資格を取得した理由(回答者は3344。複数回答) |
「IT関連の資格は,その分野でのコミュニケーションができることを示す『ボキャブラリ・テスト』のようなもの。知識として知っていることと,現場で実践できることを勘違いしないような仕組みを作って行くべきだ」(28歳,SE)
高度な資格取得者=高額所得者?
資格取得者と年収の関係について調べてみたところ,興味深い結果が出た。高度なスキルを認定する「上位資格」の取得者は,総じて年収が高いことが分かったのである(図3)。全体では年収700万円以上の回答者が32.8%であるのに対して,上位資格取得者では軒並み80%を超えている。
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図3 上位資格取得者の年収(カッコ内は回答者数) |
これらの上位資格を取得するには,相当に高度なスキルや知識が必要。その分,高度な業務に就きやすい。もちろん上位資格を取得したことだけで収入が決まるわけではないにせよ,高収入を得る一因となっていることは確かだろう。
今回のアンケートでは,回答者からの自由意見も多数寄せられた。本誌では,そのうち紹介可能なものを抜粋して掲載している。さらに,すべての自由意見をこちらのページに掲載しておいた。ただし,全部で2400件以上もあるため,すべて見終えるのは一苦労だ。
いかがだっただろうか。調査結果に興味を持たれた方は,ぜひ本誌をご覧いただきたい。
(玉置 亮太=日経ITプロフェッショナル)