• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • PR

  • PR

  • PR

  • PR

  • PR

記者の眼

国内初の無線LANアクセスが休止に追い込まれた背景――セキュリティへの注力が裏目に

2002/12/11 ITpro

 第一種電気通信事業者のモバイルインターネットサービス(MIS)が,2002年4月から提供していた無線LANを使う公衆エリアでのインターネット接続サービス(無線LANアクセス)「Genuine」を,2002年12月中に休止することになった(関連記事)。

 今後は基地局数を大幅に削減したネットワークを使って,携帯型の端末を使うIP電話サービスの実証実験に移行する。将来的には,「無線LANアクセスの端末として有望なPDA(携帯型情報端末)などの普及や,無線LANアクセス向けコンテンツの増加などを待って,サービスの再開に備える」(MIS)としている。

 MISは,国内で初めて無線LANアクセスを開始した通信事業者であったため,後に続いて無線LANアクセスを開始したNTTグループなどの事業者も,MISのサービス休止には高い関心を持っているようだ。これにはMISによるサービスだけでなく,国内の無線LANアクセスの市場全体がまだ立ち上がる気配を見せないことが背景にある。

 サービス・エリアの展開方針やユーザー認証時のセキュリティ方式など,MISのサービスにはほかの通信事業者と異なる点がいくつかあった。MISがサービスの高度化にこだわった結果ではあるが,皮肉にもそれらが同社の経営を早々と行き詰まらせる要因になったという見方もできる。

ローミング戦略の欠如がエリア展開を困難に

 MISは,ほかの無線LANアクセスの通信事業者とは異なり,駅構内や喫茶店など点在するエリア(スポット)だけでなく,携帯電話のように屋外の面的なエリアでサービスを提供する目標を立てていた。実際,東急田園都市線の三軒茶屋駅周辺などでは,駅周辺の道路沿いなど比較的広範囲の屋外エリアを整備していた。

 しかし,「現時点では極めて稼働率が低い基地局が多いため,エリアの選定を根本的に見直す必要が生じた」(MIS)という。今後はエリアをいわゆるスポットに限定したサービスへの移行も考えられるが,MISはそういったサービス変更は考えていないとしている。

 現在では,MIS以外にNTTグループも無線LANアクセスに参入しているが,どの事業者も積極的な設備投資によるエリア展開には足踏みしている状況である。このためNTTグループは,グループ各社や東日本旅客鉄道(JR東日本)などと,基地局を補完し合う「ローミング・サービス」を提供することによって,ユーザーが多くのエリアでサービスを使えるよう工夫している。

 ローミングとはインターネットのバックボーン回線を相互接続することにより,ほかの事業者が敷設した基地局を使って自社のユーザー向けにサービス提供することである。ところが,MISは不正アクセスを防止することを優先するために,ほかの事業者とは異なる強固な認証時のセキュリティ方式「AES[用語解説] 」を唯一採用していた。このため,ほかの事業者とローミングを提供し合うことができず,それがエリアの早期展開を困難にする一因にもなった。

事業の打撃となったJR駅でのサービス不認可

 無線LANアクセスのエリアとして,鉄道の駅構内は最も優先すべき場所である。しかし,MISは東日本旅客鉄道(JR東日本)が所有する駅構内への基地局設置に関して,通信事業関連の紛争問題を扱う紛争処理委員会の裁定を待った結果,2002年8月に総務省の認可を得られないという事態になった。

 この時は,総務省がMISによる基地局の設置を認可する方針を示していたものの,紛争処理委員会が「現在の電気通信事業法では所有者であるJR東日本の意思に反する形でMISによる駅構内への設置を認可するのは適当でない」と判断したことを受けて,総務省は不認可とせざるを得なかった。

 これによりMISのサービス運営が一層困難になったといえるが,JR東日本の駅構内をローミングによってエリアにできる可能性がないわけではなかった。JR東日本は,「JR駅構内での無線LANアクセス事業を独占的に提供するために,無線LANアクセス・サービスによる基地局の設置を拒んでいるわけではない」としていた。

 実際,JR東日本はMISに対する譲歩案として,「当社が設置した無線LAN基地局をMISがローミング契約により使う方法も提案した」という。ところがMISがこの提案を受け入れず,自社による基地局の設置にこだわったため,両社間の合意が難しくなってしまった。MISが自社の基地局にこだわったのは,不正アクセスなどを徹底的に排除するため,特に強固なセキュリティ技術に対応した基地局を採用する必要があったからだ。

セキュリティへの意識が既存の通信事業者よりも強かった

 総務省は事業者ごとにセキュリティ方式が異なることがエリア展開の障害になった問題について,「MISのセキュリティ技術が本当に必要かは判断が難しいが,通信事業者ごとに特徴のあるサービスが並立できる環境の整備を目指す」とした。

 こうした背景もあって,総務省はMISによる基地局設置の認可を引き続き推進する予定だった。具体的には,不認可を説明した報道資料で,今後は認可へ向けて事業法の改正を検討していくと記載していた。この時点で既に,次期の通常国会で法改正する方針を固めていたようだ。「現行の事業法では通信事業者に開放すべき公共スペースとして駅構内が含まれていないため,これを追記する方法などが考えられる」という。
 このような法改正が順調に進めば,2003年前半にMISへの認可が下りる可能性もあった。しかしそれを待たずに,MISはサービスを休止するところまで追い込まれてしまった。

 MISは技術顧問に国内でインターネットの普及に尽力してきたWIDE[用語解説] の関係者を多く招くなど,既存の通信事業ではなく,インターネットの延長となるサービスを目指していた。このため,インターネットの世界で大きな問題になっているセキュリティ対策への意識が強く,サービスの孤立につながってしまった。

一方で,既存の通信事業者は,初期投資をなるべく抑制しながらエリアやユーザー数を拡大するため,普及段階に入った技術の採用を優先させる傾向がある。このため,セキュリティ面ではMISより不安な点もある。いずれにしても,今回のMISのサービス休止を受けて,今後は経営を一層重視する無線LANアクセスの事業者が増える可能性もある。

(稲川 哲浩=日経ニューメディア)

あなたにお薦め

連載新着

連載目次を見る

今のおすすめ記事

ITpro SPECIALPR

What’s New!

経営

アプリケーション/DB/ミドルウエア

クラウド

運用管理

設計/開発

サーバー/ストレージ

ネットワーク/通信サービス

セキュリティ

もっと見る