少し前になるが,日経コンピュータ9月23日号で「Webサービスはこんなに簡単!」という特集記事を担当した。Webサービスを使ったシステムを開発した企業を回ってみると,どの企業の担当者も「Webサービスを使うと簡単にアプリケーション同士が連携できた」と口を揃えて証言していた。これで特集記事のタイトルは固まり,Webサービスの導入が意外に容易であることを,各社の取り組みを基に紹介できた。

「どのように通信するか」に悩まずに作れる

 Webサービスの特集記事を書き上げたあと,記者は実際にWebサービスを作れるかどうかを試すことにした。「本当に簡単なのか」,自ら検証したくなったからだ。Javaの開発環境と,TomcatやApache AXISといった,Webサービスを公開するのに必要なソフトをノート・パソコンにインストールしてトライした。

 具体的には,ノート・パソコンで簡単なメッセージを画面に表示させるWebサービスと,それを利用するクライアント・プログラムを作成した。作ったばかりのWebサービスをクライアントから呼び出すと,ちゃんと応答する。インターネットで公開されている情報を基に試行錯誤した結果,ソフトのインストールからわずか半日でそこまでたどり着くことができた。

 実際に取り組んでみて驚いたのは,作業中に「通信相手のアプリケーションとどのように通信するか」に悩むことがなかったことだ。やったことと言えば,Javaプログラムを作り,手順に従ってWebサービスを作成したこと。これまでJavaを使ったことがなかった記者は,むしろJavaプログラムをどう作ればよいかといったことに,気を払わなければならなかった。

次の課題は「ビジネスや業務にどう生かしていくか」

 あるソフト・ベンダーの担当者は,「異なるプラットフォームで動作するシステム同士がWebサービスで簡単に連携できるという認識が,顧客企業の担当者にも広まれば,システム・インテグレーションの案件は一層増えるのではないか」と予測する。Webサービスを利用して接続することにしておけば,異なるシステム間でどのようにデータをやり取りするかといった技術的課題を考えなくても済むからだ。すると課題は,「Webサービスをビジネスや業務にどう生かしていくか」ということに絞られてくる。

 社内システム同士の連携にWebサービスを利用している,ある企業のシステム担当者は,「Webサービスの開発支援機能を充実させたツールを利用したので,他のシステム間連携技術を使ったときに比べ,半分のコーディング量で済んだ」という。「システム間連携にかける作業時間を短縮できると,開発費用を削減できるし,サービスを提供するまでの時間も短縮できる。複数のシステムを連携させて,新しい事業を始めるときにはWebサービスの利用は有効。迅速なビジネス展開を支援できるようになる」とその担当者は期待を寄せる。

 Webサービスはインターネット経由で,地理的に離れたシステム同士を接続することにも利用できる。Webサービス対応システムを導入した,あるASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)事業者の役員は,「ここ数年,ASPサービスを使いこなす顧客企業から『ASPサービスで提供されているアプリケーションの機能を社内システムに組み込んで使いたい』という要請が多かった。Webサービスという技術が出てきたことで,ようやく顧客企業の要望に簡単にこたえられる」と,導入した狙いを語る。

 なお,記者の次なる目標は,インターネットで公開されているWebサービスを自分のパソコンから利用できるようにすることである。

(西村 崇=日経コンピュータ)