ひと口に,台湾や韓国の企業というなかれ。そのビジネスマインドは大きく異なるし,日本企業がそれぞれから学べることは実に多い。

 とかく日本人は,「台湾や韓国」と一括りに表現しがちだ。しかし,アジアを知り尽くしているビジネス・パーソンたちは少し違う。「韓国や日本の企業は・・・」という言い方をすることが多い。彼らは,韓国と日本は台湾やシンガポールとは違うという認識を持っている。逆に言えば,彼らから見ると韓国企業と日本企業はよく似ているのだ。

 台湾企業は日米の大手先発メーカーとまともに競争しない製品,むしろそれら大手先発メーカーに使ってもらえるような補完的な製品を作るというビジネスモデルを確立していることは前回述べた(「“台湾流”から学ぶITビジネスのヒント」)。

 では,韓国企業はどのようなビジネスモデルを持っているのだろうか。今回も前回と同様に,半導体製造装置分野を例にとりながら紹介しよう。

日米に追いつき追い越せの韓国流は衰えず

 今年の1月31日から2月2日にかけて,韓国ソウル市にある国際見本市センター(COEX)で開かれたセミコン・コーリアには,日米の大手半導体製造装置メーカーに混じり,韓国企業が大挙してブースを構えた。

 特徴的なことは,韓国企業が先行する日米の半導体製造装置メーカーとまともにぶつかる製品を作り,展示していた点である。狙いは,国産品で海外勢を迎え撃つことだ。独自色を前面出す台湾流の生き方とは,これだけでもずいぶん異なる。

 実は,このセミコン・コーリアに先立ち2000年12月にも,同様の半導体製造装置の展示会が韓国半導体産業協会(KSIA)主催で開かれた。この展示会に参加したのは韓国企業だけ。目的は,三星電子や現代電子産業などの半導体エンジニアの目を,海外(具体的には米国と日本)から国産品へと向けさせることだった。

 これまで韓国は,三星,現代,LG,大宇といった大企業・財閥が産業界の中核にどんと腰を下ろしていた。エレクトロニクス産業やコンピュータ産業を支えるすそ野を形成する中小企業(下請け企業)は育っていなかった。たとえば,韓国の半導体産業を支える製造装置はほとんどが米国や日本の製品だった。こうした構造に危機感を募らせた韓国政府は,製造装置産業を育てるための支援に乗り出した。その成果が,今回のセミコン・コーリアの盛況につながった。

 しかし,ちょっと待ってほしい。海外製品から国産品へという戦略はどこかで聞いたことはないか? そう,日本の一般的ビジネスマインドととてもよく似ている。

 こうした韓国の「追いつき追い越せ型」のビジネスマインドは,実は3年前の通貨危機のときに見直す機会があった。しかし半導体製造装置の状況をみると,どうも昔とさほど変わっていないようである。結局,同じような製品が市場にあふれ,価格競争に陥ってしまう危険性を相も変わらずはらんでいる。

台湾と韓国から大いに学ぶ

 いま韓国には不況の嵐が吹き荒れている。確かに韓国政府は,大企業・財閥中心の経済体質を変えるために中小企業の支援に力を注いだ。その結果として生まれたのがネット企業群だった。すそ野の広い中小企業育成は,道半ばの感がある。

 こうしたネット企業群は一時は華やかだったものの,日本や米国と同様にバブルが弾け,辛い時期を迎えている。米国の後追いビジネスに過ぎず,不況に打ち勝てるだけの独自色を出せなかった。

 アジアの企業群を見続けている筆者は,こう思う。「韓国企業を見て我が身を振り返り,台湾企業を見てグローバル競争に勝つためのビジネスマインドを知れ」と。失われた10年を過ごしてしまった日本企業にとって,そこには有益なヒントが数多く隠されているように思えてならない。

(津田 建二=Nikkei Electronics Asiaチーフテクニカルエディター)