「教師の約70%がLinuxデスクトップ専用パソコンが学校での利用に『適している』または『不十分な点もあるが適している』と回答。岐阜大学付属小学校のようにLinuxに完全移行した学校も現れた」――独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は7月19日,「学校教育現場におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての実証実験」の報告書を公開した。
「学校教育現場におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての実証実験」は,大学や小学校,専門学校などの教育現場にLinuxデスクトップを導入し,実用の可能性と課題を探る実験。経済産業省が2004年10月から2005年6月にかけてIPAを通じ実施した。Linux専用パソコンを導入する実験では全国の9校に307台を導入し,生徒3089名が授業で使用(関連記事)。CD起動のLinux「KNOPPIX」を利用した実験には,8校で673名の生徒が使用した(関連記事)
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図1●Linux専用パソコン実験での教師による評価 魅力と今後の利用意向,満足度の評価比率 |
ただし,27.3%は「不十分な点が多く,検討を要する」,3.6%は「学校での利用には適していない」と回答した。課題として挙げられたのはWebブラウザで見えないページがある,オフィス・スイートのデータ互換性が悪い,マルチメディア・データの取り扱いに問題がある,起動が遅い,リムーバブル・メディアの取り扱いが難しい,などだ。総合的満足度では,約80%の教師が「十分満足」または「ほぼ満足」と回答している。
実験を通じてLinuxの改良も行われた。実験で開発された,ディスクの内容を一斉にコピーする「クラスルームPC管理ソフトウエア」はオープンソース・ソフトウエアとして公開された。また,Linux用マルチメディア・プレーヤーの不具合の修正なども行われている。
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図2●KNOPPIX利用実験での生徒へのアンケート 今後もKNOPPIXを利用したいか |
「実社会ではExcelが利用されており,OpenOffice.orgを学んでも就職に役立たない」という意見もあった。特に商業高校ではこの点が不満となっており,東海商業高校では,半数が「もう使いたくない」と回答している。
IPAでは今後,学校関係者向けに,オープンソース・ソフトウエアを導入するためのガイドブックを作成する。秋にも公開を予定している。
2005年度は,財団法人 コンピュータ教育開発センターが「Open School Platform」プロジェクトとして教育現場へのLinuxデスクトップ導入実験を行う。2004年度に実施した岐阜県と茨城県つくば市での実験を継続するとともに,新しい地域での実験も行う。